内容説明
生産性を高める新しい機械や生産方法は新たな雇用を生み、私たちの賃金と生活水準を上昇させる――これが経済の理屈だが、現実の歴史はしばしばそれに反している。中世ヨーロッパにおける農法の改良は飛躍的な増産を実現したが、当時の人口の大半を占める農民にはほとんどなんの利益ももたらさなかった。船舶設計の進歩による大洋横断貿易で巨万の富を手にする者がいた一方で、数百万人もの奴隷がアフリカから輸出されていた。産業革命にともなう工場制度の導入で労働時間は延びたにもかかわらず、労働者の収入は約100年間上がらなかった。なぜこのようなことが起きるのか? 圧倒的な考究により、「進歩」こそが社会的不平等を増大させるという、人類史のパラドックスを解明する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
あらたん
60
「テクノロジーの進化は労働者を必ずしも幸せにしなかった、むしろこれまでのほぼ全ての歴史において格差を拡大させ労働者を不幸にしてきた、ただ、これはテクノロジーそのもの意思ではなく人間社会、特にその時々の支配層、の選択である」というのが上巻の主な主張。おそらく下巻ではAIの影響を論ずるのだろうがどのような主張がなされているのか楽しみ。2025/06/19
姉勤
46
ネットコンテンツ"COTEN RADIO"の 科学技術の歴史特集より刺激を受けて。科学技術の発展で人類が幸せになった。というのは偽りという本書。古くは農耕の発明により、狩猟時代より人類の摂取カロリーや寿命は低下し、開墾や穀物の増産が農民をさらに疲弊させた、と。時代は下り産業革命の機械化、動力化による省力によって人間力が低価値となり機械の限界に合わせて人間が働く事となった20世紀前半まで。肉体の限界からの、暴力の示威交渉の副産物としての人権や対等な交渉権という現代的価値を獲得していった。さらなる絶望の下巻へ2025/05/20
塩崎ツトム
28
テクノロジーの進歩は富とゆとりをもたらすが、それは民草が団結して、きちんと権力者に物申して、搾取されないように戦ってこそのもので、そこんところを見逃すと100%搾取されるという話。特にイーロン・マスクや竹中平蔵みたいなタイプの人間が「there is no alternative.」とか言い出したらもうアカン。オルタナティヴは間違いなく存在する。わたしたちが望む限り。そして黄色いレンガ道がエメラルドの都に続いているとは限らない。2024/01/30
紅咲文庫
27
農耕開始からリーマンショックまで時間軸も語られる地域も広大だが、迷子にならず読み進められるのは細やかに配慮された文章のおかげ。上巻最終でイギリスで産業革命が起きた理由を、緩んだ封建制の中で新しい技術の発明者が中流層を確立し得たこと、その彼らがのし上がる手段として富を獲得することに執着したことが書かれ下巻へ続く■生産性バンドワゴン:生産性を高める新しい機械や方法は賃金も上昇させるという考え方。企業は生産性向上すると生産量を増やすためより多くの労働者を確保しようとする。その手段として賃金を引き上げるというもの2024/01/04
confusion_regret_temptation
24
特にイギリスとアメリカの歴史に沿って記述されたものであるが、技術の発展が全ての層に富をもたらすとは限らなかった、もっと言えばもたらさなかったのはひとえに既得権益層が欲をかいたからと言えそう。徐々に徐々にそんな状況も変化して一般層にまで賃金の上昇の恩恵に与れるが、その辺の闘争の歴史は少なくとも上巻にはあまり描写されていなかったかな。下巻も期待です。2025/09/29
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