内容説明
敗戦後日本人の苦難の歩みを描いて,日本中に感動を巻き起こした名著の写真増補版.旧版の2.5倍以上に増補された貴重な写真は,著者みずからによって本文といっそう緊密に組み合わされ,敗北を抱きしめて立ち上がった民衆の類まれな経験を語り尽くす.ヴィジュアル史料と文字史料が織り成す陰影深い戦後史像の誕生.
目次
増補版への序文
日本の読者へ
凡例
謝辞
地図・日本帝国の拡大と崩壊
上巻 写真・図版出典一覧
序
第1部 勝者と敗者
第1章 破壊された人生
第2章 天降る贈り物
第2部 絶望を超えて
第3章 虚脱――疲労と絶望
第4章 敗北の文化
第5章 言葉の架け橋
第3部 さまざまな革命
第6章 新植民地主義的革命
第7章 革命を抱きしめる
第8章 革命を実現する
上巻注
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
えちぜんや よーた
111
当時は言いたいことがあっても、ほとんどが新聞の投書とラジオの街頭インタビューぐらい。でも今はTwitter、Facebook、はてぶなどSNSが完備している。もしも終戦後の日本人が、そのときの気持ちをWebでつぶやいたら、「リツィート」されまくったり、「いいね!」が押されて、あっという間に「まとめ」記事が出来上がりそう(場合によっては「炎上」するかも)。日本史の授業では教えてくれないほどの、虚脱感、空腹感、解放感がこれでもかというぐらい出てくる。2014/11/28
ベイス
98
玉音放送を聞いて流された涙は様々だっただろうが、そこに天皇の姿はあまり思い浮かんでいなかったようだ。軍国主義から民主主義へと大転回し右往左往する終戦直後の激動を鋭く見つめる。アメリカのヒューマニズム的施策がどのように導入され、日本の為政者たちはどう対応したのか、新聞の投書を拾う形で庶民の生活の空気も伝わってくる。「一億総ざんげ」といって中和化し「逆コース」が始まって反共の最前線に引きずり込まれていく。あるいは便乗していく。加害よりも被害意識がふくらむいびつな状況、中国や朝鮮は眼中から消えていく。2023/10/29
あすなろ
83
ジョンダワー氏は、戦後のみんなを書く。このみんなが敗北を抱きしめ、死と破壊が終わり、耐え難きを耐えた後の新たな国を造る迄の姿を詳細な資料や調査を駆使し記す。その資料性も凄いが、我々が知らない或いは知らされていない事がなんと多いことか!隠されてしまった物・埋もれてしまったものもあるだろう。しかし、我々は氏の増補版日本の読者へで書かれているとおり、敗戦を最も重みのある歴史の瞬間として振り返るべきものとして抱きしめ続けなくてはならぬと思う。ここには現代からは想像のつかぬ敗北を抱きしめた我が国が書き記されている。2020/08/16
ころりんぱ
57
すごい!占領下の日本人の様子が幅広く、とてもわかりやすく書かれている。読むのに時間はかかるし、情報が膨大なので一回では消化しきれないけれど。アメリカ側が日本をどんな風にしたかったのか、敗戦直後の日本人がどんな暮らしをし、何を考えていたのか、そういう事を多角的、かつ客観的に書いてあるからとても勉強になった。明も暗も包み隠さず、感情的でない、このような本を読んだのは初めて。歴史家という人の凄さをひしひしと感じた。なんていうかな、歴史を分析してこれからに活かすって、ほんと大事なんだな。良い本に出会いました。2015/05/11
壱萬参仟縁
46
1999年初出。随所に出る写真は史料の価値が高く、高校日本史でも積極的に利用をおススメしたい。初めて見る写真が多いのは、日本の歴史教科書の視点と違うダワー氏の見識の高さがあるのだろうと推測できる。鶴見俊輔『戦後日本の大衆文化史』との併読も奨励する。大東亜共栄圏:奇怪なキメラ。開戦後半年の幸福感は夢にすぎず、日本人は乱暴の限りを尽くした。中国人の抵抗が柔軟で不屈。合衆国が長期戦で精神的・物質的な底力がいかほどか誤算をおかしていた(3頁)。2015/12/16