内容説明
カフカの名作小説をまさかの大阪弁で翻訳!
「どないかしてこれを追い出さな」
ある日突然、巨大な虫へと変身してしまったグレゴールと、異常事態にてんやわんやな家族たち……。
はたして彼らは平穏な生活を取り戻せるのか?
怒濤のテンポで繰り広げられるドタバタ劇!
――グレゴール・ザムザはある朝けったいな夢から目が覚めてみたら、ベッドん中で馬鹿でかい虫に変わってる自分に気がついた。仰向けの背中は鎧みたいに硬いわ頭をちょっともたげてみたら腹は茶色ぅふくらんで硬い節に分かれとるわ、その腹にかかっとる布団はずり落ちる一歩手前で最後の瞬間を待つばかり。無数にある脚は腹回りのわりに情けないくらい細ぅて、目の前でワヤワヤと頼んなくうごめいとった。「おれ、どないしてん?」(本文より)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
石川桂子
8
大阪弁のおかげか文章の理不尽さとくどさが和らいでとっつきやすいと思う。読みたいけどだるいなーと思ってる人、途中で訳がわからんのじゃ~!と放りだした人もこの本から入ればよいのでは。吉本新喜劇の舞台を思い浮かべながら読むとコメディ感が出てきてなおよろし。グレゴールの衣装はダンゴムシのかぶり物な。2025/04/19
ヨハネス
6
標準語をイントネーションだけで大阪弁を表せる人がいるが、イントネーション無しでここまで表せるのも才能があるように感じる。友人は「もっとコテコテ」を期待したそうだが、こんなもんだろう。普通の翻訳を実は読んだことがないのだけど、有名文学を10頁の漫画にした本の影響で、誤った先入観を修正できたのは良かった。普通は、これは不条理の深刻さを描いたものと解釈するのだろうが、大阪弁のおかげでまるで喜劇のようになり、深刻にならず読めたのも大変よかった。2025/06/16