内容説明
想い出をひもとくと、人生の味わいはぐっと深まる。デビュー作『天使の卵』がベストセラーとなり、南房総・鴨川でのゆたかな自給自足生活。出奔そして離婚、東京での綱渡りの日々。常識はずれな軽井沢の家で新たな生活、3度目の結婚――。そんな村山由佳の大胆な生きざまと、作家としての30年を支えてきたものとは? 季節・猫・モノをキーワードにひもとく、極彩色の記憶たち。人気作家になって抱えた葛藤、編集者との関係、20年隠してきたある猫の秘密、過去の恋愛の数々など、初めて明かすエピソードも満載。年若いあなたの肩を「案外、大丈夫よ」とやさしくたたき、人生後半戦のあなたに「この先が楽しみ」と思わせてくれる、滋味あふれるエッセイ集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
193
村山 由佳は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。本書は、デビュー30周年 記念碑的自伝歳時記エッセイ、おまけに掌編小説「我が家の言いぶん」が付いてます。波乱万丈な人生だからこそ、面白い小説が書けるのかも知れません。 https://hb.homesha.co.jp/n/na0c90c676eab?magazine_key=m49ef45e5a51a2023/11/15
万葉語り
55
今年最初の1冊。途中から作風がガラッと変わってダブルファンタジーは読んでいたが、そういうことだったのかと納得した。自分のルーツや生活や経験を大事にするところがよかれあしかれ作品にも今の暮らしにもつながっているのだと思った。背の君ってくすぐったい言葉ですね。2024‐12024/01/01
優希
55
作家生活30周年の記念的エッセイと言えるでしょう。12ヶ月の暦になぞらえて、日々の思い出や生活を紡いでいます。四季の彩りと共に歩んできたことを大切にしているという愛おしさがありました。2023/11/05
sayuri
49
村山由佳さんのデビュー30年、記念碑的エッセイ。卯月から弥生までの、12ヶ月の季節を巡る記憶と、巻末に書き下ろし掌編小説「我が家の言いぶん」を加え書籍化した作品。幼少期のエピソードや父との想い出、母との確執、愛猫の話、2度の離婚、3度目の結婚生活などが綴られている。お母様との複雑な関係性、元夫の借金返済など、苦しい思いを経験されて来た村山さんだが、今現在がとてもお幸せそうで最終頁にはグッと来る。印象に残るエピソードはいくつもあったが、『弥生』の中で描かれた父に対する後悔には胸が締め付けられた。写真も満載。2023/11/11
nonpono
47
著者の最初の印象って甘い小説を書いて動物がいる牧場で馬に乗る人だった。だけど、直木賞受賞の「星々の舟」でガツンとやられ、文春の「ダブルファンタジー」の連載は過激で過剰でこの人になにがあったのかと心配した。男と別れるたびに脱皮している。色恋を肥やしにしているから。前の旦那の借金を背負ってもカラッとして強い。だからこそ、私たちに豊穣で濃厚な伊藤野枝や阿部定の心の声やうずきが響く物語を展開してくれる。「自分が偏愛する世界への憧れこそが、私をここまで連れてきてくれた」、わたしたちもその片翼のつばさに誘われ幸せだ。2024/09/15