内容説明
かつて街から出て別の場所で働き、五年前から兄を頼って再び街の片隅で金勘定をしている私から見ると、街の外の変化に比べれば、この街の変化など微々たるものに過ぎない。もうずいぶん前に、夜と心中するような女はいなくなったし、今では男と心中するような女も少なくなった。表面だけ明るく、少し退屈になった街で、みんながごく個人的に病んでいく。
群像8月号掲載の中編を単行本化。
ホストクラブの受付で働く「私」、ホストにハマる幼なじみ。夜の世界を「生き場所」とする彼女らの蠱惑と渇望を描く傑作小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
152
120ページに満たないのに読了に時間を要した。詰まるところ私には掴めそうで絶対に掴めない世界観な感じ。兄の経営するホストクラブの受付の私と幼馴染の祥子、祥子の贔屓のホストと暮らす私、私とホストクラブに貢ぐ女、私と入院中の祖母・・静と動、静と静の絵が頭に浮かんでは霞む。それが作品世界に入って行けないじれったさでそのまま読了した感じ。私には合わなかったのだろう。2024/01/23
花ママ
54
ギフテッド、グレイスレスに続いて鈴木さん3冊目。いずれも自分の日常とは全く異なった世界にいる人びとの物語。兄が経営するホストクラブの受付で働く主人公と、ホストに嵌まる幼なじみの祥子 自分の身を削って稼いだお金を、ホストに貢ぐという行為は、どうころんでもわからない。私さえ満足ならいいということか。それが生きがいになるのだろうか。今まで読んだ物語の中に、決まって主人公の「祖母」が登場するのは、鈴木さんの中に、おばあさんへの思い入れがあるのかなぁ。2024/02/28
ぽてち
34
兄の経営するホストクラブで唯一の女性として働く私。仕事は彼女曰く「金勘定」だ。彼女の周りで起きる刹那的な出来事を硬質な文体で淡々と綴った作品。水商売や性風俗の世界には縁がないので書かれている内容は興味深く読んだが、面白かったとは言えないなあ。彼女の辿ってきた人生も断片的すぎて、なにかを感じるには手がかりが足りなかった。2024/01/10
道楽モン
34
作者の小説3作目。140ページの短編ではあるが、今作も文体は重厚かつ硬質だ。兄の経営するホストクラブで会計を担当する主人公の視点から、虚構と欲望と承認欲求に満ちた世界を作品化している。幼馴染が転落してゆく様を目の当たりに、しかも彼女の贔屓ホストと暮らしているという設定。更に衰えつつある祖母、亡き母への反発という隠されたテーマが今回も足下に横たわっている。如何様にも派手に料理できる素材と設定ながら、あえて自分の文体を貫く姿勢は、純文学の様式のみならず、文学の可能性を信頼しているということなのだろう。2023/12/14
dolce vita
30
何かとニュースになっているホストクラブと女の子たちのことを思いながら読了。なんだか複雑な気持ちになる。#NetGalleyJP2023/12/20
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