内容説明
君がまだ3歳か4歳だった頃、君と地面はもっと近かった。君の父親がついた小さな嘘。母親が打った特大のホームラン。心揺さぶられた映画。性の目覚め。学生運動。パリでの暮らし。妻との出会い。外見はまるで変わっても、君はまだかつての君なのだ――。人生の冬にさしかかった著者が、身体と精神の古層を掘り起こし、自らに、あるいは読者に語りかけるように綴った、温かで幻想的な回想録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
47
回想録ですね。身体と精神に掘り込み語る世界は、自分のみならず読者にも語りかけているのだと思えてなりません。儚くてあたたかく、幻想的な世界が美しかったです。2024/02/13
Shun
38
先日お亡くなりになった作家ポール・オースターによる回想録。人生の終盤を自覚した著者が自らの半生を振り返り、幼少期に世界をどのように意識し世界のあれこれと出会っていったか記される「冬の日誌」。そしてまた自己の精神面での揺らぎを捉えるように記した「内面からの報告書」と、異なるアプローチで綴られています。作家渾身の回想録とも言える濃密な内容で幼少期に感じた己の身体的・精神的変化を捉えた描写から親族のこと、学生時代に没頭したこと、そして戦争の時代と私小説を読んでいるように没頭。著者の筆だからこその充実した読後感。2024/05/08
Porco
14
回顧録。解説の通りオースターの様々な作品の源泉を知ることもできるし、オースターの内面や過去の旅を通して自分の方も旅に出たりできる本。読んでてオースターのように冬ではなくどちらかというと秋という年齢であっても、思い返してみたら思春期前の思考を予測はできても反芻は無理だということを思い知らされた。同じように無知以下の何ものかへの移行は自分にもあったはずなのに、それは今では一部を除き消え去ったか埋もれてしまった。今に連なるわたしであり君は幼い頃にいったい何を考えたのだろう?2024/02/19
練りようかん
10
幼い頃のケガ、心地の良い芝生の広場、野球。著者自身の人生を二人称視点の距離感と時系列通りではない自由さでもってのびのび綴られている。記憶と認識の蓄積から引き出した“内側”なんだと思ったのだが、誰かを知るなんて不可能に近いという言葉がこの作品自体を指しているようで、余白をもたせるのも魅力。特にユニークなのが『冬の日誌』の今まで住んだ場所のリスト。幽霊屋敷からブルックリンに移るとおーやっと!と思ったり、映像の立ちやすい描写で捗る実感が楽しかった。全ては偶然、死だけが必然とあり、故人となった今身に沁みる言葉だ。2024/06/19
うた
9
良くも悪くもオースターの回想録という感じ。語りのリズムが心地よく、特に少年の日の思い出は良いことばかりではないけれど、微笑ましく輝いている。60歳台前半から、後半に向かおうとする時期に書かれたものだから、人生の苦しく目を向けたくない面も十分みて、苦味がちょうどいい刺激になっている。2023/12/27
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