内容説明
1994年から2011年まで日本ホラー小説大賞に設けられていた《短編賞》部門。賞の30周年を記念し、集成として名作が復活! 玩具修理者は壊れた人形も、死んだ猫も直してくれる――。小林泰三の色褪せないデビュー作「玩具修理者」。「10年に1人の才能」と絶賛された沙藤一樹が描く、ゴミだらけの橋で見つかった1本のテープの物語「D-ブリッジ・テープ」など計5編を収録。《大賞》とは異なる魅力があふれた、究極のホラー短編集!
<収録作品>
小林泰三「玩具修理者」
沙藤一樹「D‐ブリッジ・テープ」
朱川湊人「白い部屋で月の歌を」
森山東「お見世出し」
あせごのまん「余は如何にして服部ヒロシとなりしか」
※本書は日本ホラー小説大賞の短編賞受賞作の中から5篇を収録したアンソロジーです。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yukaring
73
グロテスクなものも多いが《ホラー小説短編賞》を受賞しただけあってかなり粒ぞろいな短編集。言わずとしれた小林さんの『玩具修理者』は何度読んでも不気味な展開とゾッとさせられるラストが色褪せない傑作。また京都の花街で舞妓としてデビューする晴れの日。死んだ女性の霊が現れる『お店世出し』はオチが秀逸でクオリティの高い作品。ゴミが溢れた橋で見つかった少年の死体と1本のテープ。このテープの内容の胸の悪くなるような描写の悲惨さは読む人の心を抉る『Dーブリッジ・テープ』など不気味な味わいがクセになるホラー5編。2023/12/01
sin
57
小林−生物と無生物を別け隔てなく扱うは人の想像力か?沙藤−ただただ悲惨な自分語りはこの世の無情を映す鏡だ!朱川−こうであろうと思う真相の斜め上を行く思いがけない結末!森山−ほんまどうならはったんやろか?あせごのまん−ふらついた心が陥る蟻地獄な不条理に惹き込まれる!日本ホラー小説大賞《短編賞》収録された順に1995・1997・2003・2004・2005年の受賞作品だが、何れも怖さより物語としての特異性が際立つ作品が受賞しているように感じた。2024/07/13
tonpie
44
公募新人賞の受賞作を5作品集めたものなので、一点突破のエナジーを感じる作品ばかり。ホラー読んでおかしいけど、清々しい元気をいただけました。それと、「恐怖」は時代の旬の感性に反応する部分もあるんだな、ということを認識しました。上巻は1995 ~2005年。失礼ながら個人的なランキングつけてみた。 ●1位 お見世出し 森山東 いじめで自殺した京都の舞子の怪談。古典的と言いたくなるほど話の展開がうまい。京都弁の舞子の語りも素晴らしく機能している。人情噺的に落ちそうで落ちないセンスも良い。頭抜けて完成度高い。↓ 2023/12/24
あたびー
44
既読積読のものもあるけれどもやはりここは買っとかないと、と買った。5人の作者のうち、2人も物故者であるというのが悲しい。小林泰三「玩具修理者」はやはり傑作。沙藤一樹「D・ブリッジ・テープ」には圧倒された。朱川湊人「白い部屋で月の歌を」はグロテスクな中に澄み切った美しさがある。森山東「お見世出し」の語り口は目の前に舞妓さんが立ち現れるような滑らかさ。あせごのまん「余は如何にして服部ヒロシとなりしか」不条理の中に男のどうしようもない情けなさが浮かんでいる怪作。2023/12/09
絵
30
ホラー短編賞の5篇、以下順不同に感想。 「白い部屋で月の歌を」切なさ怖さ美しさのバランスと余韻が見事でした!「D‐ブリッジ・テープ」「余は如何にして服部ヒロシとなりしか」怖さより不潔さと気持ち悪さが上回りました。「お見世出し」京都弁の語りに引き込まれます。自分にとって一番怖い、和風ホラーで家で1人で読めず電車で読みました。 「玩具修理者」雰囲気もストーリーも最高でした!優勝!!2025/04/14