内容説明
真敷市公民館で行われている奇術ショウの舞台で、仕掛けの中から飛び出すはずの水田志摩子が現れない。それどころか彼女は自分のマンションで殺されていた。しかも死体の周囲には、同じ奇術クラブの仲間、鹿川舜平が書いた「11枚のとらんぷ」に鏤められた11のトリックを構成する小道具類が毀されて置かれていた。秘密の儀式めいたトランプ奇術殺人は何を意味するのか。著者の鹿川舜平が辿りついた事件の真相とは。自らも数多くの奇術を生み出し、石田天海賞を受けているマジシャン泡坂妻夫が、小説家としてのスタートを飾った記念すべき第一長編。/解説=相沢沙呼
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
カノコ
28
奇術ショウの最中に姿を消した女性が、自室で他殺死体で見つかる。現場には、奇術小説「11枚のとらんぷ」に登場する小道具が散乱していた。作中作にかなりの紙幅を割かれているが、これが面白い。奇術クラブの面々の人となりが分かるだけではなく、短い話の中にしっかりオチが利いていて流石の手腕。しかし何と言っても解決パートが凄い。事件とは関係のない描写が多いと感じさせておいてからの(しかし退屈ではない)、怒涛の伏線回収。プロ奇術師でもあった著者の強みが存分に発揮されたデビュー作。人を騙すことに長けすぎている。名作。2024/08/03
だるま
17
殆ど図書館本を利用だが、これは購入、再読。国内ミステリでは私の生涯のベスト5に入る大傑作。装丁と解説が変わっただけで小説自体は以前のままだけど、このシンプルな表紙はとても合っていると思う。内容は素人マジシャングループの公演中に起こった殺人事件。その顛末が第1部と第3部で描かれ、間の第2部は奇術に関連したショートショートミステリ。このショートショートだけでも非常に面白いのだが、何故中間に入れたかの意味が分かった時には愕然とした。泡坂マジックに完全にヤラれた。これ以上、伏線の出し方の見事な作品を私は知らない。2023/12/02
ひろ
16
著者の長編デビュー作であり、マジシャンのバックボーンが存分に盛り込まれている。相手を欺くミスリーディングなど、ミステリとマジックの共通点は多いとは思っていたが、本作では高い次元で融合している。物語全体の構成も楽しく、1部では主要人物たちのマジックショーが描かれる。ハプニングを交えつつの状況は文章だけでも楽しい。事件が発生し、関連する作中作が2部に置かれる。全11編でマジックのタネを紹介するのだが、ここ単体でもとても面白い。3部で至るところに隠されていた伏線が回収される。解決パートの畳みかけには圧倒された。2024/08/03
有理数
12
奇術と本格推理の見事な融合。奇術ショーの最中に起こった殺人事件と、作中作『11枚のとらんぷ』が絡み合い、鮮やかな推理で真相を手繰り寄せる。正直、作中作は、最後に綺麗に推理と結びつくとはいえ冗長に感じ、奇術そのものもビジュアルでイメージしづらく、また登場人物が覚えづらい、といった点で読むのに少し苦労したが、第Ⅲ部の華麗な推理はとにかく満足度が高い。特に何の疑問も抱かなかったものに、別の角度で光が当たると、急激に面持ちを変え、点が線となる。本格推理の醍醐味。面白かった。2024/01/09
yuui
12
なるほど!伏線回収が面白いマジックのミステリでした🃏あの短編いるんかなと思ったけどしっかりと入りましたね😚 1部2部3部と何もかもが上手で綺麗でした📚 ミステリって面白いなと改めて思わせてくれる本でした🤗2023/12/13