内容説明
大正三年、帝大講師の南辺田廣章(みなべだこうしょう)と書生・山内真汐(やまうちましお)は、信州・諏訪大社の麓に降り立った。伯爵家に代々伝わる「鉄環(かなわ)のお役」を果たすために。神域の山で禁足地を犯した二人は、山奥の秘村に“来訪神(オトナイサマ)”と遇され、囚(とら)われる。臥龍洞で風の神を祀るその村では、十二年に一度の“奇祭”が今まさに執り行われるところだった――。鉄環の謎と因習の裏に秘められた真実を暴く民俗学ミステリ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちょろこ
120
二人が良い、一冊。舞台は大正三年の信州。鉄環を持ち帰る御遣いとして信州を訪れた南辺田廣章と山内真汐が鉄環と因習に隠された謎を紐解く民俗学ミステリ。早々にオトナイサマとして村に囚われてしまった二人から目が離せない展開に。奇怪な祭りの因習、次第に見えてくる鉄環と祭りの関係は陰鬱とせつなさでたまらなく心を刺激してくる。真汐の、過去の悔いゆえからの、目の前の人を救いたいという想い。南辺田の、文化風習の継承と変容の共存を願う姿。それぞれの哀しさを軽減するための想いが胸に沁みるほど良かった。次巻の地での展開が楽しみ。2024/02/25
yukaring
86
ある村の十二年に一度の奇祭。この謎を帝大講師の南辺田廣章と書生の山内真汐が解き明かす民俗学ミステリ第3弾。今回の舞台は信州・諏訪。神域へ足を踏み入れてしまった2人はその村に軟禁されてしまう。"来訪神(オトナイサマ)"として遇されるが、祭りのために十二年幽閉された少年や首に鉄環を付けられた少女など異常な因習を目の当たりにして・・。連綿と受け継がれる悲惨な歴史、2人は悪しき因習を断ち切ることができるのか?人々を救いたい真汐の真っ直ぐな想いが胸を打つ。奇譚の黒幕も見え隠れする今回はシリーズの中で一番面白かった。2023/12/24
さつき
71
今回の舞台は諏訪湖周辺。今までの作品に比べて風景が目に浮かぶ分、ずっと身近でよりドキドキしました。御柱祭に関連しているのかなぁと思ったら、さらに土着的な秘祭の登場!新展開もあり続きが気になります。2024/03/24
NAO
66
時代は大正初期、帝大講師で伯爵家の末弟南辺田廣章(みなべだこうしょう)を主人公とする民俗学ミステリ。ハイカラなインテリの主人公が昔話の怪談にでも出てくるような奇祭の謎を解く。ちょっとおどろおどろし気な舞台設定に最もそぐわない主人公を置くというアンバランスさが、いい味を出している。この作品はシリーズ物で3作目。前2作を読んでいなくてもまだそれほど支障はないが、繋がっているらしいことは分かるので、1、2作も読もうと思う。2024/01/26
sin
61
前の二作品より展開のテンポが良くて面白さは増したが、物語が進む中で罰を課せられて預かりの身となった書生の真汐が思いの外、自由に動けることに不自然さを感じてしまった。そのうえ、主の廣章があくまでも部外者としての立場を堅守したせいか、水戸黄門的な胸のすく結末を期待した身としては肩すかしな感じは否めない幕切れを迎えてしまった様に思えてならない。人は権威を振り翳して欲望を満たし、それを是として顧みない…物語は結局、南辺田家が帰属する薩摩がその発端と明確化したことで次の段階へと突き進んで行くようで興味が尽きない。2024/02/09