ちくま学芸文庫<br> 中世の覚醒

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ちくま学芸文庫
中世の覚醒

  • ISBN:9784480098849

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内容説明

12世紀の中世ヨーロッパ、一人の哲学者の著作が再発見され、社会に類例のない衝撃を与えた。そこに記された知識体系が、西ヨーロッパの人々の思考様式を根底から変えてしまったのである。「アリストテレス革命」というべきこの出来事は、変貌する世界に道徳的秩序と知的秩序―信仰と理性の調和―を与えるべく、トマス・アクィナスをはじめ、キリスト教思想家たちを激しい論争の渦へと巻き込んでいった。彼らの知的遺産は、現代にどのような意義を持つのであろうか。政治活動の発展と文化的覚醒が進んだ時代の思想を物語性豊かに描いた名著。

目次

はじめに/序章 中世のスター・ゲート──西ヨーロッパの覚醒/第1章 「知恵者たちの師」──アリストテレスの再発見/1 驚くべき事実──ムスリムの知的財宝/2 プラトンとアリストテレス/3 「哲学者」アリストテレス/4 アリストテレス思想の核心/第2章 「レディ・フィロソフィー」の殺人──古代の知恵はいかにして失われ、ふたたび見出されたか/1 アウグスティヌスとその時代/2 滅びゆく帝国/3 異端者たちの行方/4 唯一神教とアリストテレス/第3章 「彼の本には翼が生えている」──ピエール・アベラールと理性の復権/1 天才登場/2 革命的変化の胎動/3 普遍論争と三位一体論/4 アベラールの死/第4章 「そなたを打ち殺す者は祝福されるだろう」──アリストテレスと異端/1 民衆の宗教運動の高まり/2 カタリ派の登場/3 カタリ派の中のアリストテレス/4 アリストテレス自然学への禁令/第5章 「ほら、ほら、犬が吠えている」──アリストテレスとパリ大学の教師たち/1 托鉢修道士、大学へ/2 「学としての」神学へ/3 魅惑の自然哲学/4 トマス・アクィナスとパリ大学/第6章 「この人物が知解する」──パリ大学における大論争/1 急進派と保守派/2 アリストテレス主義者としてのトマス・アクィナス/3 断罪と復権/第7章 「オッカムの剃刀」──信仰と理性の分離/1 終わりゆく中世/2 「新しい道」へ/3 オッカムの破門/4 かくして寛容の門は閉ざされた/第8章 「もはや神が天球を動かす必要はない」──アリストテレスと現代の世界/1 信仰と理性の緊張関係/2 アリストテレス革命の忘却/3 アリストテレスの遺産/謝辞/訳者あとがき/文庫版訳者あとがき/解説(山本芳久)/註/参考文献/人名索引

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

まふ

76
中世のキリスト教の思想に多大なる影響を与え続けてきたアリストテレスの哲学の神学の影響に関わる歴史の書である。消えてしまっていたアリストテレス諸学が、イスラムの侵略によってイスパニアに残っていたために、カトリックの教学の歴史は大混乱に陥る。「信仰」と「理性」とをどのようにアウグスティヌスの説いていた神の世界に一致させるか。「信仰」の世界から「理性」ははみ出さざるを得ない、という今日の「理性優先」「信仰個人」的状況になってきた、という。この膨大な流れを要領よく「通史」としてまとめ上げた好著である。2020/09/23

ベイス

65
アリストテレスを始めとするギリシャ哲学が、なぜ紀元前の大昔に、あれだけ諸学を究められたのか。そしてその後、人類があの水準に追いつくまでに、なぜ千年以上かかったのか。それは「キリスト教」があまりにも強烈に人々の心をとらえ、自由な精神を縛り上げたから、ということを想わずにはいられない。それくらい、キリスト教がまだない時代に思索したアリストテレスの考え方は「伸び伸び」としており、だからこそその哲学と出会った中世の学者たちの価値観に、世界史上類を見ないほどの大転換をもたらしたのだ。2020/12/01

syaori

58
中世におけるアリストテレス再発見とその波紋を追った本。彼の「合理的な探究の方法」によって起きた「信仰と理性」の軋轢と、その調和を目指した中世哲学の展開を物語性に富んだ語り口で追ってゆきます。これは信仰と理性の分離で終了し、科学的な発見を神学的に解釈することから解放された世界は近代化を迎えることになりますが、しかしと作者は続けます。この心と頭の分離、理性の偏重が現代社会の行き詰りの一因ではないかと。この問題提起も含め、中世へのイスラム哲学の影響やスコラ哲学についてなど大いに知識欲を掻き立てられる一冊でした。2020/12/15

ジュン

18
‪ルーベンスタイン『中世の覚醒』 (ちくま学芸文庫)。こんなに面白い本に出会えることの幸せ。アリストテレスの受容にまつわる中世史、科学史と政治思想史、はてはその現代的な意義を勢いよく学ぶことができる。恐ろしく人間的で論争的な、東西冷戦をも凌駕する知のドラマを満喫できる。好著中の好著。2019/05/26

フリウリ

16
レコンキスタによって、アラビア語に翻訳されたアリストテレスを再発見したヨーロッパ。1150年代、再発見されたギリシア時代の著作物がラテン語に次々と翻訳され、カトリック社会に流入した時代を中心に、中世の神学と哲学がいかに絡み合い、分裂していくかを描いています。何よりボエティウス、アベラール、トマス、オッカムまでの中世哲学(そしてカトリックに取り込まれるフランシスコ会、ドミニコ会)の流れが明快に物語化され、ここまでわかりやすい中世哲学の通史はないのでは、と思いました。アリストテレスの見方も変わったかも。92024/08/25

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