内容説明
若き臨床心理学者の冒険譚にして青春物語
われらがカウンセラー、東畑開人の一般書デビュー作、文春文庫版の電子書籍化。
文庫版あとがき「8年後の答え合わせ、あるいは効果研究」を付した完全決定版です。
人生に痛めつけられたからこそ、
人を癒やす力を得た野生の医者たち。
彼女・彼らと共に過ごした
灼熱のフィールドワークの記録!
気鋭の心理学者にしてカウンセラーは、精神科クリニックを辞め、学界を揺るがすこと必至のフィールドワークを開始。沖縄で人々の心を癒やし続ける謎のヒーラー達を取材しながら自ら治療を受け、臨床心理学を相対化しようと試みた。「野の精神医療」と学問の狭間で辿り着いた驚愕の発見とは? 涙と笑いの学術エンタテインメント。
単行本:2015年8月 誠信書房刊
文庫版:2023年9月 文春文庫刊
この電子書籍は文春文庫版を底本としています。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
水色系
25
沖縄で人々を癒す「野の医者」(学問の外からアプローチする、時々スピリチュアルなところが医者や学者とのちがい)に迫る一冊。面白いし、文体からして面白い。助けられた人が助けるようになる、という連鎖など、確かになあと思いながら読了。2023/11/28
ryohjin
22
沖縄で勤務する臨床心理士が、地元で癒しの治療を行う「野の医者」をフィールドワークし「心の治療とは何か」を問います。好奇心旺盛に受けた「野の医者」たちの治療の様子が面白く描かれますが、ある意味商売敵である「野の医者」と親しくつながり取材できるのは著者の人柄によるのでしょう。著者は臨床心理学の立場にたちながらも「野の医者」の存在を否定せず、心の治療の治癒は「ある生き方をあたえ」るもので、それぞれの治療文化のどちらがよいかの問いはナンセンスであり、「それは生き方の問題で、人生の価値は人それぞれ」と結論付けます。2023/09/26
紫羊
16
時系列でいうと「居るのはつらいよ」の直後の出来事が描かれている。一時期占いの世界に片足を踏み入れていた経験から、野の医者界隈の雰囲気は何となく理解できる。お客様の多くが同業者で、スクールに安くない受講料を注ぎ込んでは何の権威もない修了証ばかり収集していた。離れて十年近く経つが、その頃私が陥っていた妙な状況が冷静に分析されていて、ようやく気持ちがスッキリした。2025/03/23
Kano Ts
15
フィールドワークの過程を経て、心の治療に関して学問とスピリチュアルの相対化を描いたノンフィクション。筆者は調査をする学者であり、治療を受ける当事者でもある。この2面性が物語としてこのストーリーを面白くしていたと思います。また、スピリチュアルな世界をより正確に捉えるためには必要な要素だったとも思います。思わず笑えるエピソードが中心ですが、「学者と野の医者の違い」などが説得力を持って描かれます。小説的な読み物としても、気軽な論文・新書的な読み物としても楽しめる良い本だった気がします。2024/01/24
遊々亭おさる
14
野の医者とはスピリチュアルな方法で心の病(傷)を癒そうとする在野でカウンセラー的役割を担う人たちを差す。その道の専門職である精神医学を学ぶ人たちの療法と怪しげな理論の上の型破りなカウンセリングを施す野の医者たちの共通点と相違点を若き心理療法士が沖縄を舞台にして体当たり的フィールドワークにより浮き彫りにする一冊。心を癒す=道を示す。心の治癒とは癌の寛解とは違い治癒の定義が曖昧で治療者によりゴールが違う。どちらが良いとか悪いとかの話ではなく、自分に合ったゴールを知るために心の治療巡りの旅に出掛けるのも一興か。2023/11/08