内容説明
ある日突然、人格が他者のものと入れ替わってしまう――奇異な現象が多発するジェヴレン社会に、ハント博士たちは直面した。人格変容の起こった者はアヤトラと呼ばれ、新興宗教の活動家となるか、完全に気が触れてしまうこともしばしばだった。しかし、彼らは決して精神に異常をきたしたわけではない。新たな人格が生まれる裏では、別の宇宙からコンピュータ・ネットワークを通じてデータが送り込まれているというが……。人類の想像を超えたところに存在する宇宙とは? ハント博士たちはジェヴレンを狙う“内なる宇宙”を阻止できるのか?/解説=永瀬唯/*本電子書籍は『内なる宇宙 下』(創元SF文庫 新装新版 2023年10月20日初版発行)を底本としています。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
keroppi
69
下巻に入り、話は混沌とし、私の想像力がついていけなくなってしまった。仮想現実が別の人格や記憶を作り出すという展開は面白いのだが、様々な宇宙人が入り混じり、誰が何だったかが、途中分からなくなったところもある。遥かな宇宙なのに、ちょっとした外国の話のようなところもあって、その映像が浮かんで来なくなったのも混乱の原因かもしれない。しばらく間を置いて読み返した方がいいかもしれない。この続編が、今年刊行されるらしいが、どうしよう。2024/06/12
まちゃ
51
ハント博士たちが解き明かしたジェヴレン混迷の原因は、「内なる宇宙」。単なるサイバースペースものではない、巨大コンピュータシステム内部に偶発的に誕生した情報宇宙という発想に驚かされました。その異世界を排除するでも、隔離するでもなく、受け入れようとするテューリアン文明の寛容さに驚かされた。人類文明に対するある種のアイロニーかと。第5部も楽しみです。2023/11/19
火の壁
20
コンピュータにおける膨大な情報の集積が、自分たち人間と同じように物を感じたり考えたりする人格を作り、さらにはもう一つの宇宙を形成した、というタイトル通りの主軸の設定がいかんせん取っ付きづらく、サイバーパンクとカルトが混ざり合っているような構成でもあったりで、話としてあまり入ってこなかった。次作のミネルヴァ計画も一応読んでみるが、、話の展開がやや不安。2024/12/27
本の蟲
15
仮想現実が主題のSFとして『マトリックス』より早い本作だが、さらに先の可能性まで踏み込んでいる。ジュヴレン社会で突如人格が変貌してしまう病状は、別宇宙(究極の仮想現実システムにおける情報宇宙内の情報生命)からの乗っ取りだった。前書きでもネタバレされているし、タイトルから察した人も多いのでは。我々が五感を通じて認識している世界も情報にすぎない話は、上巻でも語られている。人工(情報)生命の行き着く先。意識の芽生えとその人権については、今後も数多のSFで検証されていくのだろう2023/12/14
たかっさ
12
登場人物に『犯罪組織の顔役』『・・在住の怪しげな男』とか、うーん、ちょっとなー、と思いつつ、まぁ主役はアクションもこなしてしまう科学者だから、いいのか。。ダンチェッカーの活躍がやや減ってしまったので、次作に期待。2025/04/11