内容説明
大学２年生の奥津湊斗（おきつ・みなと）は霊が視えるのに加え、「死人の夢」を見る力を持っている。
それは、霊に取り憑かれた人の近くで眠ると、夢でその霊の“死の瞬間”を生々しく追体験させられてしまうというもの。
幼い頃よりこの特異な霊感体質に苦しめられてきた湊斗は、なるべく他者と接触を持たないようにして生きていた。
だが、同じ学年に復学してきた高原玲奈（たかはら・れいな）と出会い、事態は一変する。
彼女は、10年間行方不明だったが突然「神隠し」から帰ってきたと噂されている女子で、とびきり美しい容姿ながら周囲から奇異と偏見の目で見られ、距離を置かれていた。
それというのも玲奈は講義中に、度々前触れもなくバケツの水を被ったかのようにずぶ濡れになり、本人は「怪異の仕業だ」と頑なに言い張るのだ。
実は玲奈は、「神隠し」という異境から帰ってきたせいで、特異な霊感が生じてしまっていた。
死体が発見されていない霊、つまり神隠しとも解釈できる霊に寄り憑かれやすくなっており、さらに霊障が具現化しやすくなってしまっているらしい。
湊斗は色々な意味で目立つ存在の玲奈を避けようとするが、あるきっかけから思わず手を差し伸べてしまう。
それ以来、「死人の夢」を使って彼女に憑いた霊の行方不明の死体の在りかを捜していくことになり……。
「死人の夢」を見る湊斗と「本物の神隠し」から帰ってきた玲奈。
誰にも理解されない孤独な大学生２人が、唯一無二の関係を築いていくまでの、苦くて甘い青春ホラーミステリ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
よっち
39
霊や「死人の夢」を見る大学生の奥津湊斗。彼が神隠しから生還して復学した高原玲奈と運命的な出会いを果たす青春ホラーミステリ。幼い頃より特異な霊感体質に苦しめられ、他者と接触を持たないようにしてきたのに、たびたび怪異に苦しめられ周囲から距離を置かれる玲奈が気になって手を差し伸べる湊斗。自分の力を活かして彼女を脅かす取り憑いた女性、神隠しと噂される女子大生や子供たちに対峙し、彼女を救うために奔走するのに、なぜか友人になることは拒否する湊斗が面倒くさくて、そんな二人のこれからの物語をまた読んでみたいと思いました。2023/08/24
ジンベエ親分
29
「お迎えに上がりました」シリーズも終わっちゃったしなー、でもまだ続けられそうな気もするので、こんなの書いてるヒマがあったら夕霞や火車先輩の続きの構想でもしててよ…と思いつつもやっぱり読むのであった(笑) なかなか斬新で面白い設定で、湊斗と玲奈の拗れっぷりにも納得。というかちょっと重すぎるとも言えるけど。でも確かにこれはヘビーだわ。「死霊の『死の瞬間』を追体験する」湊斗の体質により、「偽りの神隠し」を解明していく話なのだが、玲奈のツンデレキャラが面白く、今後の大きな謎が提示されてもいるので、これ続くよね？2023/09/03
しぇん
24
怖くは無いのですが内容的にはホラー文庫の方で出ていても良かったのでは？と、思ったりも。霊能力無いのと、死者の夢を見る設定から基本事件は取り返しつかない状態ですし。大まか謎など既に示唆されてますが、解決はしてないので続編は出るんですかね？2023/09/05
あずとも
9
霊が視えるだけでなく夢でその霊の“死の瞬間”を生々しく追体験させられてしまうという特異な霊感体質に苦しめられてきた湊斗は10年間行方不明だったが突然「神隠し」から帰ってきた玲奈と大学で出会う。他人と接触を持たないようにしてきた湊斗が手を差し伸べ自分の能力で玲奈に憑く霊の死の真相を明らかにしていく青春ホラーミステリ。周囲から距離を取る湊斗と距離を置かれる玲奈、この2人のこれからの話をまだまだ読んでみたい。2023/08/28
冬野
8
初読み作家さんの青春(+恋愛)ホラーミステリ。霊の死の瞬間を夢に見る湊斗と、十年の神隠しから帰ってきた玲奈。孤独な主役二人が持つ体質がけっこう複雑で、もしや湊斗が玲奈に膝枕してもらうための後付け設定なのでは!?なんて邪推してしまった。他人が亡くなる瞬間を五感で追体験するなんて想像だけでしんどすぎるな…。二人とも面倒くさい性格なのでなかなか距離が縮まらずやきもき。しかし玲奈が湊斗に惹かれる要素、あるかなあ？大きな謎が解決されていないので(角川文庫のいつものパターン)続刊してほしいですね。星:4/52023/09/24
