内容説明
ニューハンプシャー州の田舎町に集団で移住してきた自由至上主義者が、理想の町をつくろうとした結果……米国で存在感を増すリバタリアンたちの思想と暴走を没入型取材で描き出した全米騒然のノンフィクション。「リバタリアンが集まる自由な町がいかにして全米きっての住みにくい場所になったか。急進的すぎる理想主義者たち、彼らとご近所になるのだけは遠慮したい」速水健朗(コラムニスト)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
absinthe
168
ためになった!所はニューハンプシャの森の街グラフトン。リバタリアンのabsintheには耳が痛いが一つの事実。登場するのはレッセフェールどころかただのヒッピー。彼らに街を任せると何が起こるのか。税金に反対することで公共サービスは壊滅。道路は破断寸前、図書館も警察も消防署でさえ事実上の壊滅。熊が放置された結果は重く、やがて人にも被害が。双子のようにそっくりだった隣り合う2つの街、カナンとグラフトン。150年後、商店が並び図書館も2つあるカナンと荒れ放題のグラフトン。両者を分けたものはなにか。2023/08/21
Sam
55
概念として知っていても具体的にイメージするのがなかなか難しい「リバタリアン」。本書を読んで「リバタリアン」がどんな人たちで、何を考えてどんな行動をしているのかが少しはイメージが持てるようになった。本書に登場する「リバタリアン」は人々が自由に生きていたアメリカ黎明期のようなユートピアの再興を夢見て行動を起こすが、「自由」を絶対的に信奉し税金も行政サービスも拒絶する彼らの取組の結果は果たして・・・興味深い本ではあったが、登場人物が多いうえに時を行ったり来たりするのでなかなか勢いに乗って読めないのが難点。2022/03/06
ばんだねいっぺい
32
これは、勉強になる。もし、まちの住民の大半がリバタリアンだったら、どうなるの?というルポ。但し、本書は、無政府主義っぽいリバタリアンの話ではないか。こういう思想の限界の象徴としてアメリカクロクマが出てくるのがおとぎ話めいているが現実だ。2022/06/26
くさてる
27
どんな種類の規則も望まず、税金も政府も求めていない自由主義者たちがニューハンプシャーの田舎町に住み着き、自分たちの理想のコミュニティを作ろうとした顛末と、人間を襲い、人間の思うようにならない野生の熊との関係を描いたノンフィクション。登場人物も多く、なおかつアメリカの政治史や政治に詳しくないので、読み進めるのはなかなか難しかったけど、面白い。理想を現実とするのはほとんどおとぎ話の世界のようで、だからこそちょっと不条理小説のような読み心地もある。ネトフリとかのドキュメンタリーで観たいなと思いました。2022/09/21
belalugosi6997
25
序「こんな(熊)の話が聞きたくて読んでいるんじゃない」と批判的だったが「あれ?熊ちゃんの話題がない」と不満になる。ついに、ドーナツ・レディが熊ちゃんとのほのぼのとしながらも悲しく、刹那さが胸を突き刺す。本来は「銃を突きつけられて政府の言う事を聞くか?死ぬか?と聞かれたら死を選ぶ」ような過激な自由至上主義の翻弄を期待して読むつもりがいつの間にか、なるほど!意外と自然との共存は可能なのだな、と関心させられた(後に後悔)。未だ現代に夢を追いかけるアーミッシュのような地域で繰り広げられる、米帝の広大さを感じた。2022/10/26