内容説明
政治学の研究にオーラル・ヒストリーの手法を初めて導入した著者が,所蔵する膨大なインタビュー資料をもとに,日本政治の相貌を描く.岸信介はじめ,藤山愛一郎,福田赳夫といった政権中枢にいた者たち,あるいは岸の側近や政敵たちの証言を再現させて,「安保改定」等に彩られた戦後史の知られざる断面を明かす.
目次
はじめに
第一章 オーラル・ヒストリーの旅
一 私とオーラル・ヒストリー
二 政治学とオーラル・ヒストリー
第二章 岸信介とその証言
一 岸信介オーラル・ヒストリーあれこれ
二 岸信介と米ソ冷戦
第三章 保守政治家たちとその証言
一 宰相の舞台裏──中村長芳、そして矢次一夫
二 「絹のハンカチから雑巾へ」──藤山愛一郎の転変
三 形影相伴うがごとく──「安保担当大臣」福田赳夫
四 「自衛隊治安出動」の瀬戸際に立つ──赤城宗徳とその周辺
五 「バルカン政治家」といわれて──三木武夫の異議申し立て
六 外務官僚と政治──下田武三と東郷文彦の流儀
第四章 社会主義者たちとその証言
一 日本社会党の最左翼から──岡田春夫と飛鳥田一雄の急進思想
二 野党外交を動かしたもの──「平党員」田崎末松と中国
三 五五年体制崩壊から自社連立政権へ
──「非自民」山花貞夫・久保亘と「自社連立」村山富市・野坂浩賢
オーラル・ヒストリーの出典
おわりに
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おさむ
29
オーラルヒストリーの大家とされる著者による、日本政治史。とりわけ岸信介を中心とする1960年の日米安保改正交渉の舞台裏の話が面白い。正負両面を抱えていた岸政権だが、不平等だった安保をできる範囲で平等にしたという業績は認めるべき。民間出身の藤山愛一郎外相の政治家に転んで資産が底をついた端末。自衛隊の治安出動反対で知られる赤城宗徳防衛庁長官は最初はむしろ出動に積極的で、庁内の慎重論から反対に転じたこと、大政翼賛会の非推薦候補だったことを勲章にしていた三木武夫は地元の選挙区事情でならなかっただけで(続く)2017/11/26
koji
9
安保改定前後の政治状況における当事者の生々しい証言もさることながら、生身の政治的人間像に大いに興味を持ちました。著者が言うように政治家の意思決定は、権力作業と政策作業が綯い交ぜになって形作られますが、その本質を著者は丁寧に聞き取っていきます。その秘訣を著者が「聞き手と話し手の信頼感(距離感)」と言うのは得心がいきます。エピソードを一つ。バルカン政治家三木武夫は徳島で後藤田・三木戦争を繰り広げました。徳島勤務時、上司から徳島では政治の話はタブーと厳命されたことを思い出しました。政治闘争の凄まじさの一面です。2016/05/04
エドバーグ
3
岸政権での安保改定、細川政権の瓦解の内情が よくわかります。中選挙区ではカネが必要、小選挙区でそれを改善しようと政治改革が実施されたのを思い出しました。昨今の選挙を見ると一長一短なことが身にしみます。2020/01/21
バルジ
1
同じ著者の『岸信介』『戦後史のなかの日本社会党』の姉妹編とでも言える内容で面白かった。 政治家の美辞麗句の裏に隠れた烈しい権力欲とその人間模様は、イデオロギー云々ではない「人間」の本性を思い知らされる。2017/09/08
takao
0
ふむ2025/08/02