内容説明
一神教が世界史を創った!
宗教とは何か? それは、共同体を作り上げるために必要とされる「フィクション」である。
そして世界史は、一神教的な信仰を基盤として築かれた共同体が、
段階的に構造を変化させることによって形成されてきた。
宗教の基礎を的確に捉えた上で、一神教の思想史を縦横に語る圧巻の講義録。
まず上巻では、ユダヤ民族が困難な境遇のなかから唯一神の信仰を案出した過程、
世界宗教としてのキリスト教の成立、ローマ帝国やゲルマン系諸族との関係性、
イスラム教の出現と拡大、カトリック的教皇主権体制の確立について論じられる。
「「一神教は共同体を作り上げるためのフィクション」という一貫した観点によって描かれた観念の興亡史。
古代宗教に端を発するこの基本設定は、曲折を経て現代にも引き継がれている。
「信教の自由」と「政教分離」の関係もこの認識を踏まえなければ理解できないだろう。」
――宮崎哲弥(評論家)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
てつのすけ
19
ローマ帝国滅亡は、一神教であるキリスト教が関係しているのではないかと考えるところがあり読み進めた。そうしたところ、いきなり、この考えが否定されてしまった。なるほど!そのような考えもあるんだなと気付いた。下巻でも新たな発見があるかもしれない。2024/02/17
Iwata Kentaro
10
これは面白い。今年読んだ本で間違いなくベスト候補。宗教関係の本は多々読むけど、著者がインサイダーなので不全感が残ることが多かった。本書は「宗教は共同体を作るためのフィクション」と大胆に規定し、その目線で一神教を歴史とともにまとめていてとても新鮮。門外漢なので「しらんけど」こういう本は初体験。批判的吟味が健全になされていてとても理解が進む。本当に見事。2023/06/12
HaruNuevo
9
筆者による宗教の定義は「共同体の形成原理」、「信仰によって基礎づけられたフィクションの体系」であり、ここを出発点として、まずユダヤ教の背景、体系、歩みを述べ、次にユダヤ教の課題を克服する形で生まれてきたキリスト教がどうやって世界宗教への扉を開いたのかを論じ、さらにイスラム教こ背景、体系、歩みとユダヤ教、キリスト教との関係を説明。 そして上巻は、中世ヨーロッパにおける叙任権闘争、十字軍を経てキリスト教がどう変容しまた社会をどう変えていったかを論ずる。 一歩引いた時点で、適度にややこしく適度にわかりやすい。2023/08/13
うすしお
5
ユダヤ教、キリスト教、イスラム教について始まりから中世までとても面白く読めた。反ユダヤ主義などの宗教間のコンフリクトが起こる要因について、少しだけ理解できた。理解できてくるとどんどん面白くなる。2023/09/10
ゴン太
1
一神教全史ということで主に教義や聖書の内容を扱った本、だと思いきやイントロダクションから予想を覆してきてなかなか面白かった。 多分サピエンス全史の影響だろうけど、神を虚構の人格と言い切ってしまうのがかえって清々しい。 宗教学と神学の違いも良く理解してなかったが、宗教学は思った以上に科学的、論理的な学問だと思った。 全体の内容としては、宗教(一神教)から見た世界史という感じで歴史の理解も進む。 逆に言うと、歴史を学びたい方は哲学や宗教を学ぶ事によって何故そのような出来事が起こったのかの理解がしやすくなる。2024/04/10