中国の死神

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¥2,860
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中国の死神

  • 著者名:大谷亨
  • 価格 ¥2,860(本体¥2,600)
  • 青弓社(2023/07発売)
  • ポイント 26pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784787220998

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内容説明

中国の死神である「無常」。寿命が尽きようとする者の魂を捉えにくるこの冥界からの使者は、日本では無名だが中国ではよく知られた民間信仰の鬼神である。冥界と密接な関係をもつ廟で盛んに祀られ、その信仰は中国にとどまらず台湾や東南アジア各地にまで広がっている。

「白と黒」のペアで存在することが多い無常は、謎の高帽子をかぶったり長い舌をダラリと垂らしたりと、強烈な視覚イメージで中国人のあいだに根づいている。だがその一方、無常がいつ、どの地域で、どのように誕生して現在に至るのか、なぜ人々は死神を拝むのか、そうした無常信仰に対する客観的な考察はこれまで十分になされてこなかった。

本書は、2年半に及ぶ中国でのフィールドワークに基づきながら、無常の歴史的変遷を緻密にたどり、妖怪から神へと上り詰めたそのプロセスや背景にある民間信仰の原理を明らかにする中国妖怪学の書。貴重な写真をフルカラーで130点以上収録。

目次

まえがき――なぜ無常なのか

序論 謎多き無常

第1章 無常を採集する
 1 廟(難易度:★☆☆)
 2 祭り(難易度:★★☆)
 3 口頭伝承(難易度:★★★)

無常珍道中A――地獄のシンデレラ@山東省カ沢市ケン城県信義村・信義大廟(二〇一九年一月七日)

無常珍道中B――地獄の扉を開いたのは誰@山東省カ沢市ケン城県エン什鎮エン什村・砂土廟(二〇一九年一月八日)

第2章 無常を観察する
 1 無常イメージの変遷――もともと黒無常はいなかった
 2 無常信仰の発展原理1――馬巷城隍廟の無常信仰を事例として
 3 無常信仰の発展原理2――東南アジア華人の無常信仰を事例として

無常珍道中C――地獄のふもとの不届き者ども@山西省臨汾市蒲県・東嶽廟(二〇一九年一月五日)

無常珍道中D――地獄のゼリービーンズ@重慶市長寿区但渡鎮未名村(二〇一九年一月三日)

第3章 無常を考察する
 1 黒無常の誕生――摸壁鬼というバケモノに着目して
 2 白無常の誕生――山ショウというバケモノに着目して

無常珍道中E――地獄の美熟女@山東省カ沢市ケン城県信義村・信義大廟(二〇一九年十一月二十一日)

結論 つまるところ無常とは

引用・参照文献

あとがき――再び、なぜ無常なのか

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

あたびー

38
すごいインパクトのヴィジュアルをした表紙の彼は、「無常」という中国の死神。死んだ人の魂を捕まえて冥界に連れていく役目をしているそうです。筆者はこの日本ではあまり知られていない神様にゾッコン惚れ込んで中国各地の廟を歩き回り土地の人からも話を聞きながら、無常の成り立ちや白と黒ふたつの無常が生まれた経緯などを論文にしました。それが本書です。丁度併読していた「点石斎画報」の抜粋「中国妖怪鬼神図譜」にもチラホラ現れる白無常と黒無常の存在に一気に惹き付けられました。でも日本の中国寺院や廟で見た覚えがない😅2024/02/16

サアベドラ

31
中国南部や華人コミュニティで信仰されている「無常」という名の死を司る鬼神について、その特異な出で立ち (書影参照) や起源をフィールドワークや文献資料などから探るノンフィクション。2023年刊。著者の専門は中国民俗学 (本書はおそらく学位論文を元にしている)。本書の絵解きが無常をめぐる謎を十分に説明しきれているとは証拠不十分につきあまり思えなかったが、著者が足で集めてきた豊富な写真や図版資料のおかげで読んでいて飽きない。各地に祀られた無常像に漂うなんとも言えぬB級感は東南アジアの地獄寺を彷彿とさせる。2024/12/06

りー

29
著者が言う「中国の死神」とは、清代に成立したとおぼしき、死者の魂を冥界へ導く2人組の神「白無情」&「黒無情」である。白はノッポで長い舌を出し、黒はチビで顔だけの地域もある、という魅力的な造型にビビッときた著者が🤤ヨダレをたらさんばかりに中国各地をフィールドワークして纏めたのがこの本。無情への愛が溢れる文章と臨場感溢れる写真に、読んでいてワクワクした。共産党の「浄化」の手を逃れ、よくぞ生き残っていてくれたと言うべき本来の中国の面白さよ。立体地獄の写真が特に良かった!残っていってほしいなぁ~。2024/04/21

さとうしん

27
出だしの軽さとは裏腹に、中身は無常のイメージと伝承の地域的、時代的変遷、そして鬼から神への変化を追った本格的な中国民俗論というか中国妖怪論となっている。結論的にはその変遷の過程は、本書の言葉を借りればベン図的な複雑なものになるようだ。間に挿入されている「無常珍道中」は調査旅行の実際とコロナ前の中国の状況を伝えてくれる。台湾の妖怪論はぼちぼち出てきているが、大陸の妖怪論も今後の充実に期待したい。2023/07/18

tom

22
書名と表紙の写真に興味を惹かれて図書館に注文。子どものころ中国で暮らし、そこで見た「無常」にインプリンティングされて、中国学に熱中することになった男が書いた本。「無常」には黒白あり、いわゆるバケモノの類。中国(漢民族)では、人は死ぬとみんな地獄(鬼界)に行く。人の霊魂を引っ張ってくるのが「無常」の仕事。この霊魂の中には悪いことをする奴もいる。これを鎮圧するのも「無常」の仕事。この「無常」が中国史の中でどんなふうに形成されたかを解き明かすのが著者の目的。見えない中国がここにあるのかと驚きながら読む。2024/03/01

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