内容説明
重厚な史実とダイナミックな虚構。玄宗と楊貴妃以後の唐の時代は、日本人にはほとんど知られていないが、ぜひこの作品で知って愉しんでほしい。
――作家 田中芳樹
◎あらすじ
元和年間、唐は憲宗の時代。皇帝の重臣・裴度の姪である裴玄静は、七歳で初めて殺人事件を解決して以来、地元では「女名探偵」として知られていた。しかし地方官僚だった父の死後、実子に家督を継がせたい継母の策略で故郷を追われ、玄静は叔父を頼って長安に向かう。そこで玄静は叔父の親友である時の宰相・武元衡の暗殺事件に遭遇する。殺される直前、正体不明の相手から繰り返し脅迫を受けていた武大臣は彼女の探偵としての評判を見込んで、周りに気取られぬよう暗号の形で「王羲之の『蘭亭序』に隠された秘密を解き明かし、皇帝や自分たちの命を狙う黒幕の正体と目的を暴いてくれ」と託していた。
玄静は、長安に辿り着いた嵐の夜に出会い、共にある怪死事件に遭遇した医師・崔ミアオと共に王羲之とその一族に因縁ある土地を巡る旅に出ることになるが、実は崔はある人物が彼女を見張るため送り込んだ間者で――
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
BECHA☆
8
西暦八百年代の中国が舞台。裴玄静という政府高官の姪にして才媛が主人公。王義之の『蘭亭序』をモチーフに起こる殺人事件に巻き込まれ謎解きに踏み込み人生が変わっていく。家族との関係、皇帝との関係、謎めいた崔淼は敵か味方か?謎が謎を読んで下巻へ続く。2023/09/30
てくてく
7
唐時代のミステリーということで話題になっていたので購読。タイトルにあるように王羲之の蘭亭序の謎がメイン。主人公は肯定の重臣の姪で地方官僚だった父の死後、継母に家を追われた「女名探偵」と評判の女性。登場人物や叙述に慣れるまで少し手間取ったが、慣れると最後まで読み通したくなる面白さだった。歴史や漢詩の知識が多少は求められる。2024/08/02
チィ★
5
もっと堅苦しい感じかと思ってたけど、想像してたより読みやすい。主人公が女の子だからというのもあるかも。謎解きストーリーがメインなのだが王羲之の名前は知ってるものの、蘭亭序を知らず。詩にも詳しくないもんだからその辺は難しく感じる。 皇帝との対面のシーンの描写が印象的だった。どんだけ神々しいのかと。 そして医師の崔淼が怪しすぎて。そんなペラペラ全部話していいのか?助けてくれてる部分はあるが、胡散臭い。 ダヴィンチコードと言われる謎解き法が出現。 下巻に突入。2025/02/05
ヒサ子。
5
王羲之の『蘭亭序』については、そういう有名な書がある程度の知識しかないまま読んだので、漢詩とかは正直理解できなかった。知ってた名前も聶隠娘だけで、歴史的背景も正直さっぱり(笑)それでも、主人公の女名探偵裴玄静が魅力的で面白かった!ようやく玄静と敵か味方か秘密が多い相手役の崔淼が、宰相の暗殺に蘭亭序に隠された秘密が関わってると気づいたところで下巻へ!2024/01/20
naimei
3
中国の歴史などに興味があり、「蘭亭序」に関して知識がある方にはとても興味深く読めると思います。 本書は真正面から正史に取り組まれ、現実と虚構を色鮮やかに織りなしており、天才詩人李賀や実在した著名な詩人や学者、唐代伝奇小説で有名な女暗殺者・聶隠娘も登場します。私はミステリー好きですが、中国の歴史にかなり疎いため、上巻は登場人物の関係性や時代小説独自の表現や漢詩など理解するのに苦労しました💦が、下巻になると慣れてきました。 歴史に疎い方でも中国の壮大な時代ミステリとして面白く読んでいただけるものと思います。2025/07/10