内容説明
昔むかし、京の都には鬼のような姫がいた。
慶長4(1599)年、京の都には鬼のような姫がいた。あやかしとの間に生まれた娘であるという噂や、そもそも女性らしからぬ……どころか人間離れした強さから「あやかし姫」とささやかれた、悪名高い姫君である。
さて、この国には陰陽師というものが存在する。朝廷に仕え、暦を作り、吉凶を占い、怪異を退ける術者だ。
「あやかし姫」こと幸徳井桜子は、陰陽師家として高名な安倍家と加茂家の流れをくむ幸徳井家の跡継ぎ娘。婿とりの必要があるが、その条件は「自分がいじり倒しても死なない男」。もはや誰とも結ばれないのでは……と思われていたところ、このたびようやく婿が決まった。
名は柳生友景、柳生一族の剣士の青年だった。
桜子のお眼鏡にかなったのだから強いことは強いのだが、友景はびっくりするほど地味な男でおまけにぐうたら。
「陰陽師の仕事は面倒だから嫌いなんだ。剣術も疲れるから嫌いなんだ」
「呆れた。じゃあ何が好きなのよ」
「お前が好きだよ」
そこに愛はあるが、友景は「桜子が妖怪だから好き」らしい。複雑な気持ちを抱えたまま、祝言の日が近づいて……!?
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
よっち
29
柳生一族の青年・友景が婿に決まった「あやかし姫」こと幸徳井桜子。何だかんだでお互いに認め合い祝言の日も近づく中、桜子の幼馴染・八条院智仁が現れる第二弾。強いことは強いのだがびっくりするほど地味な男で、おまけにぐうたらな友景との縁談を認めないと主張する智仁。妙にあやかしに取り憑かれやすい智仁が抱える事情と、妖怪に仕立てを依頼した花嫁衣装、桜子が拾った行き倒れの法師・堂馬が探していた幸徳井家の陰陽師。幸徳井家の事情が掘り下げられる一方、鼠の夜目子さんの恋心も印象的でしたが、何よりお似合いの二人が良かったです。2023/07/31
よっしー
27
図書館で見かけ、手に取りました。これ、シリーズ物だったのですね。1作目を知らずとも楽しめたのですが、知ってたらまた感想は違っていたのかなと思ったり…。妖怪だから好きだと宣言する友景の心を理解しよう、そして自分自身を好きになって貰おうとする桜子の様子に健気だなと思いつつの読了です。2024/05/29
るぴん
24
シリーズ2作目。前作よりじわじわと面白味が増してきた印象。友景は全く女心をわかってないなー。「妖怪だから好き」じゃなくて「お前が好き」って言ってあげなよー‼︎と何度思ったことか。堂々とライバル宣言をする桜子の幼馴染の登場で面白いことになるかと思いきや、話はより複雑な方向へ。桜子が助けた法師があの人物だったのは驚き。鼠の夜目子さんが健気で可愛かった。2023/07/09
すがはら
12
桜子の内面は、いかにもな普通の女子だった。好きな相手だから自信を持てなくて警戒して素直になれなくてすねて…。妖怪らしさはどこにあるんだと思ったら、ネズミの妖さんの話を聞く限りどうやら妖怪も心情は人間と変わらないっぽい。神様たちの方が桜子を可愛がりながらも、ためらいなく切り捨てる気でもいるんだからよっぽど理解不能で怖いです。登場人物たちが皆、自分は普通ではなくて歪んでいて人には言えない隠し事があるんだと主張してるのがちょっと面倒くさい。歪んでるのは少数派でいいかな。2023/09/18
イカまりこ
7
読み始めて結構すぐに、これ人物紹介とかもっと欲しいな~って思う。ヒロインの相手が誰なんだろう?って思ったし。で、半分読んだとこで気づいた。これってシリーズの続編なんじゃ?ってw 妖怪が死ぬ大きな事件がどうやら過去にあったらしく、それは丸っと前作にあるのかな?通し番号が無い以前に別タイトルなので気づかず読み始めてたわ。半分来ちゃったし意味はわかるので最後まで読んだ。照れを馬鹿力で隠すヒロインとボーッとしているようでちゃんと考えてるヒーロー。ウブなケンカップルのお話で可愛らしい。前作も探して読んでみたい。2025/04/30