内容説明
世界の頭脳であるフランス人人口学者のエマニュエル・トッド氏と、ジャーナリストの池上彰氏が、ウクライナ戦争後の世界を読み解く。覇権国家として君臨してきたアメリカの力が弱まり、多極化、多様化する世界が訪れる──。この世界はどうなっていくのか。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
120
ロシアのウクライナ侵攻に対するトッド氏の視点は異彩を放つ。自国の民主主義を押し付け普遍主義で世界を支配しようとする米国よりも、(権威主義だが)各国の特殊性を尊重し画一的な価値観を押し付けないロシアを支持する国が多いと言う。覇権主義の米国の没落である。ウクライナ侵攻はイラク侵攻と何が違うのか、その総括すらしない米国が「どの口で言うか」というトッド氏の怒りに一理はある。ただ、ロシア非難一色の世相へ一石を投じる意義は理解するが、「ノルドストリームは米英が破壊した」など断定の真偽を問いたくなる言説が多いのも事実。2023/07/19
Aya Murakami
86
某陰謀論系youtuberが紹介していたので手に取った。著者について「胡散臭い」という感じのことを言っていたのでこれは名著だと思っていたが読んでみたらやっぱり名著だった(ピリ辛難易度だったが) 最近のアメリカは中国に対する半導体の制裁とかいろいろおかしいと思っていたが想像以上に「アメリカ怖い」という状態みたい。アメリカ帝国主義拡大に伴い産業が空洞化して大砲がつくれなくなる…、この辺は自業自得というべきか。家族観やLGBTがらみで西洋ヨーロッパが孤立しているという構造も斬新。2023/08/18
榊原 香織
62
2023年6月刊 リモート対談。 ウクライナ戦争は長期化するだろうという予想。トッド5年 池上10年。 アメリカはロシアの他にドイツも抑えたい⁈ トッド、フランスのTVに出演禁止らしい2024/03/08
チャーリブ
44
エマニュエル・トッド氏と池上彰氏のオンライン対談録。主に池上氏がトッド氏のユニークな持論を引き出すような対談となっています。トッド氏は、今回のウクライナ戦争は「プーチンの侵略戦争」というジャーナリズム既定路線の考え方を否定して、「戦争が起きた最大の原因はアメリカとNATOにこそあるのではないか」と問題提起しています。かつてソ連の崩壊を予見したという彼ですが、今度は「アメリカの崩壊」もあり得ると言っています。だからかフランスの公共放送では出禁になっているそうです…。2023/10/27
ta_chanko
32
アメリカなど西側勢力の東方拡大が、今回のウクライナ戦争を原因。ウクライナ東部のクリミア半島やドンバス地方はロシアにとって絶対に譲れない地域。ロシアが意外と粘り強いのは、中国やインドをはじめとする、経済制裁に参加しない多くの国々の存在や、西側の価値観(自由・民主主義・LGBTなど)に賛同しない多くの国々の存在があるから。また、ロシアの工業生産も侮り難く、対してアメリカのGDPは金融・保険・医療・訴訟などの実体のない経済活動によって大きく表されていて、工業生産は衰退している。米英の凋落は深刻。2023/08/23