内容説明
インド洋の季節風がヒマラヤにぶつかって東アジアに流れ、梅雨前線を形成する。冬にはシベリアの冷気がチベット高原に遮られて東に到来し、日本に大雪を降らせる。モンスーンは日本をはじめ東アジアから南アジアにかけて豊かな自然をもたらし、独自の風土を育んだ。今や「モンスーンアジア」は世界の中心となっている一方で、地球規模の環境危機も招いている。この危機を克服するために、いま私たちは何をすべきか。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
70
未だに隠居できない本業ど真ん中の書であり、速攻で手に取った。前半の気候メカニズムの説明は最新の知見もあり、図もわかりやすく、特にエルニーニョ、ラニーニャの解説がありがたかった。しかし後半はちょっと。風土を短歌や俳句と絡めて論じるあたりはまだいいのだが、特に近代以降の歴史や社会の部分は、はっきり言って付け焼き刃な印象。間違いもあるし(岩倉遣外使節団が2~3年欧行してた?)、評価に疑問点もいくつもあった。参考文献もちょっと古い気がする。『綿の帝国』読了直後だから尚更そう思った面もあるが。やはり餅は餅屋では。2023/05/29
雲をみるひと
27
モンスーン地帯である日本を含むインド以東のアジアの気候や風土に言及したもの。前半の気候についての、特にインド、チベットに関する記述は知らないまたは気付いていない記述もあり大変参考になった。冒頭の地球規模の気象の話が基礎内容すぎて逆に少し読みづらいのが残念。後半は内容はさておき読み進めやすい。2023/11/03
Satoshi
12
40億人以上がその影響下で暮らすモンスーン。ベンガル湾からヒマラヤ・チベットを越えて日本まで届く季節風であり、湿潤な気候をもたらすとともに、台風・梅雨・豪雪を日本にもたらす。前半はモンスーンの仕組みを気象学的に解説し、中盤はモンスーンによりもたらす日本国内の風土・文化・国民性について言及する。そして、終盤は地球温暖化や大気汚染のモンスーンの影響を述べる。気象学の専門家であるが、気象と文化の関係性について深い興味があり、多くの文献を読まれた方であることが良くわかる。理文を超えた著者の姿勢には共感できる。2023/07/11
くまくま
6
モンスーンによって育まれる豊かな気候と、それによって生み出される風土の多様性。気象的な内容から経済、国際政治に至るまで話題も広がっているのでなかなか読み応えはあるが面白かった。2023/08/09
ポルターガイスト
6
モンスーンアジアという領域を切り出すコンセプトはひとつの見方としてとても面白い。自然地理学と経済地理学がうまい具合に融合していて地理学のよい参考書であると思う。随所に散りばめられた文学的要素も本を読ませる潤滑油の役割を果たしている。一方で筆者の理念が先行しておりそういう本にありがちな強引さは否めない。2023/05/28
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