内容説明
「別に良いやん、草が生えてたって。誰も使わんっちゃけん」大村奈美は、不機嫌だった。何故空き家である母の実家の納屋の草刈りをするために、これから長崎の島に行かなければならないのか。吉川家には〈古か家〉と〈新しい方の家〉があるものの、祖母が亡くなり、いずれも今は空き家に。奈美はふと気になって、伯父や祖母の姉にその経緯を聞くと、そこには〈家〉と〈島〉にまつわる時代を超えた壮大な物語があった――。第162回芥川龍之介賞受賞作。書き下ろし短編「即日帰郷」も収録。
目次
背高泡立草
即日帰郷
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
piro
33
無常、そして世代の繋がりを感じる作品。母の実家の納屋の草刈りに駆り出された奈美。一族総出で草を刈り、古い空き家の手入れをする一日。事件が起こる事もなく、静かに淡々と描かれますが、不思議と退屈ではないお話でした。かつてこの家に関わったと思われる前の世代の話が差し挟まれる事で、自分が時の流れの中にいる事を感じる。「なぜ誰も使っていない納屋の草刈りをしなければならないのか?」奈美の素朴な疑問は、その一日を経て、心の中では朧げな納得感が湧いたのではないかと思います。九州の方言が心地良い作品でした。2024/05/24
みき
15
古い納屋の草刈りに行く話。人生とはこういうものなのかもと思わされた。物体や行動は、以前には何かの意味があったかもしれないけれど、長い間繰り返されたり、そこに置かれたままになっている間に、意味は重要でなくなり継続的というだけになっていく。意味に固執する必要はあまりないかもしれない。2023/07/19
柊よつか
13
芥川賞受賞の表題作と、書き下ろしの短編。行間や読後感と対話した一冊。九州の離島に三世帯の親族が集まり、古びた納屋の草刈りをし、本土へ帰るまでの数日間。序盤は、何を読んでいるのだろうと戸惑ったが、他所の家族だから当然かと腑に落ちる。この草刈りを軸に、古い家と交差した人々の話が描かれる。満州行きの家族、難破船の男、刃刺の寡黙な青年、カヌーの少年。脈々と受け継ぐのではなく、もっと漠然と、でも確かに時間と人の波間に浮かぶもの。置き忘れられたのではない、だって来年も草を刈るのだから。そんな安堵で本を閉じた。2023/08/14
あ げ こ
13
家族のしゃべる言葉に足を絡めとられてしまう。饒舌で、デコボコとしていて、ゴツゴツとしていて、飾り立てたものでも、滑らかなものでもなくて、足は必ず、絶えず繁茂し続ける家族の言葉によって絡めとられてしまい、無関係のまま素通りすることが出来なくなる。あまりにも家というものなのだ、絡め取られた内にて濃密に感じるそれは。形であるとか制度であるとかとは異なるものとしての家そのものを生きているかのようなのだ。その時間、挿話さえ含め。言葉を聞くこと、素通りするのではなく、無関係のままそうするのではなく。生きるようにして。2023/04/23
ひでお
11
九州の島の納屋の草刈りに行く現代のお話に、その島の家にまつわる過去から現在への物語が緩やかにつながる作品。長い歴史のなかで、人や家族は違ってもこの島で人のつながりがあって、それこそ刈っても刈っても生えてくるセイタカアワダチソウのように、人間のもつしぶとさと強さの秘密を垣間見たような気持ちになります。九州言葉で語られる会話がまたそれを補強しているようでした。2024/01/18
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