内容説明
デスバレーで収容されたエイリアンは、冷酷な事実を告げた。新火山が実は邪悪な異星種族の手になる惑星破壊機械であり、今や地球がその標的にされているというのだ!その言葉を裏づけるように世界各地に同様の物体が飛来したばかりか、太平洋には途方もない質量の物体が落下し、海面の急激な低下と水温上昇、大気中の酸素量の危険なまでの増加といった異常現象がたてつづけに発生した。破滅へのカウントダウンがついに始まったのだろうか?現代SFの最前線に立つベアが豊富な科学的アイデアと壮大無比のスケールで放つSFスペクタル。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
えふのらん
5
「海は枯れ、地は裂け、 あらゆる生命体が絶滅」する下巻。大陸が裂けるとか地球が煮えたぎるといった言葉がここまで大真面目に書かれている作品も珍しい。平行して上位存在による選民と救出が行われるから黙示録じみた雰囲気がある。(さすがに移民船を「箱舟」と表現するのはあからさまなような気もするが)残された人々が地球の事をさっさと忘れて環境に馴染むあたりもラザロの国という感じで、煩悩とか執着に馴染んだ我々とは最期まで世界観が違った。日本ではまず書かれないタイプの作品だと思う。2022/04/14
ジンベエ親分
5
下巻から話が一気に加速する。前半であちらこちらに配置された登場人物が、それぞれの場所で物語の結末を見届ける展開が圧巻で胸に迫る。この巨大なスケールの様相を読ませる筆力はやはり凄い。ここを書ききる自信がなけりゃ、そもそもこんなネタを書こうとは思わないだろうけど(笑)。この描写だけで、長く退屈な前半を耐えて読んできた価値があった、と思うし、退屈であってもあの前半は必要だった、と思う。これ、映画化は・・難しいだろうな。ある意味非常に映画向きの話だが、この凄まじさを映像化し損ねたら全てが無意味だものね。2015/12/29
ニミッツクラス
4
88年の初版の下巻(480円)を読んだ。加藤氏のカバーは、卵型の光沢のある“蜘蛛”と、自らを“蚤”と表現した“客”の姿。重い話を淡々と、そして地球が“一度死ぬ”に至る部分では救いが無いなりに抒情的に描き切った。人類の道連れとなった動植物が可哀そうだが、いずれ地球を資源惑星として活用し再生していく道は残った。自虐的だが、エイリアンのお眼鏡にかなう種族もあるのだろうから、やはり人類の精神構造が発展途上なのは否めないのか。マーティン少年は旅立つ・・それは続編となる「天界の殺戮」へと続く話だ。★★★☆☆☆2014/11/08
マサトク
2
ついに地球が滅亡していき、選ばれた幸運な人類のごく一部だけが脱出していく。そこを丹念に精密に描く。一大スペクタルではある。非常に面白い、が、ストーリーとしてはやはり前半戦というべきか。「天界の殺戮」を読まねば。まあしかし、この宇宙が野蛮なジャングルのようなものだという概念、そういや「黒暗森林」理論じゃん…!となったので、劉慈欣面白かったクラスタはベアも読もう。2023/05/02
レイス
2
エウロパ消滅はこうきたか。酸素が1%増えるだけでも危険なの!?地球殺しのsfといい、面白かった。宇宙から飛んでくるものならともかく地中深くで衝突されては手も足も出ない。「重力が動力源のタイマーか」「こいつは優雅だ」は名セリフ。取りつかれた人々のSFは書かれなかったけど、ただの連絡装置だけでなくある程度感情というか意欲を操作するテクノロジーを注入されたんだろうな。いいね。地球が粉々になるのに為す術もない人類。それで終わりでないところもよかった。2021/11/28