国籍と遺書、兄への手紙 - ルーツを巡る旅の先に

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国籍と遺書、兄への手紙 - ルーツを巡る旅の先に

  • ISBN:9784909753151

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内容説明

「韓国籍…?」。高校2年のとき、突然知った父の出自。旅はそこから始まった

父は在日コリアン2世だった。父の死後に知ったその事実に著者のアイデンティティは揺れ動く。朝鮮半島からやってきた祖父母もその子どもである父も歳の離れた兄も、既に他界した。ほとんど手がかりがない中で資料を取り寄せ、わずかな痕跡を辿って彼らがかつて暮らした地を歩き、交流のあった人の話に耳を傾ける。その旅で次第に見えてきた家族の在りし日の姿を胸に抱きながら、目前の現実を取材する日々。現在と過去を往還する中で、時に気分が沈みそうになっても、多くの人との出会いにより、著者は自らの向かうべき道を見出していく。

【著者】
安田菜津紀
1987 年神奈川県生まれ。認定NPO 法人Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル/D4P)副代表。フォトジャーナリスト。現在、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。著書に『写真で伝える仕事―― 世界の子どもたちと向き合って』(日本写真企画)、『あなたのルーツを教えて下さい』(左右社)など。現在、TBS テレビ『サンデーモーニング』にコメンテーターとして出演中。

目次

プロローグ
第1章 旅のはじまり
第2章 「家族とは何か」から「故郷とは何か」へ
第3章 ルーツをたどって
第4章 残された手がかりをつなぎ合わせて
第5章 ヘイトは止まらない濁流のように
第6章 祖父母の「故郷」、韓国へ
エピローグ

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

しゃが

52
著者の父は在日コリアン2世だった。死後に知り、揺らぐアイデンティティは彼女を多くの疑問とともにルーツを巡る旅へ、フォトジャーナリストとしても。祖父母・父・兄の少ない手掛かりで、根気強く痕跡をたどっていく…。祖父たちの男たちの足跡でようやく、親戚たちに会うことができたが、祖母はわからなかった。歴史や文化のなかでも女たちの置かれたことがこれからのフィールドワークになるのだろう。文中の「弱かったのは、個人でなく、社会の支えでした」は不当な出来事にあった人や今の差別にあっている人すべてに通ずる重い言葉だった。 2023/07/02

Mc6ρ助

19
これは単に安田菜津紀さんの単にクンタキンテを求める旅ではないのでたどり着いたら終わりとなる話ではない(いやまあ、「ルーツ」自体がクンタキンテにたどり着いて終わりな話ではなかったが)。清算すべきものを清算しなかったことが悔やまれてならない今の日本、同じことを繰り返しそうなことが辛い。繰り返される『「弱かったのは、個人でなく、社会の支えでした」(p211等)』はそれはそうだけど、社会の支えを弱めたのは、自助、公助と宣いお金は吸い上げて社会の上の方で回す体質を肥大化させてしまったからだよね。2023/09/27

こかげ

17
お父様が在日コリアンである安田菜津紀さんの、ご自身のルーツ…父親や祖父母の人生をたどる旅の記録。いわゆる「ど真ん中」の在日ではない安田さんならではの、そしてご家族との関係も絡み合ったアイデンティティの複雑な迷い。安田さんにとって「故郷」「家族」とは何か。時には蓋をしてきたそれらの葛藤に、真剣に向き合い、紐解いていかれる過程を、折々に出会った人々や出来事など交えて素直に記録されていた。進展があって本当に良かった。また、「在日」という大きな主語ではなく、一人一人が辿った人生を想像することができた。2023/07/08

二人娘の父

14
またひとつ、国をまたいだ人生の物語を知ることができました。それはとても繊細で、心の奥のところに響くものでした。父と娘、兄と妹、祖父祖母と孫…家族と言ってしまえば簡単ですが、けっして単純ではない物語。川崎ふれあい館は、私の出身地の近所であり、初めて組んだバンドの練習場所でもありました。私の中にもある加害の過去、無関心過ぎた過去と、著者の歩みを重ねると、とても重苦しいものが胸にあることが分かります。特にお兄さんの生涯が忘れられません。一人でも多くに人に読んでもらいたい「家族」の物語です。2023/05/13

どら猫さとっち

13
一度も明かせなかった、著者の父の出自そして過去。ある手続きをしたとき、明かされた父の真実。そこから、家族のルーツをたどる旅に出た。そこで見たものは、何だったのか。フォトジャーナリストがたどった家族とは、国籍とは。そこで出会った人たちの温かみと秘められた想い。語ることのなかった歴史の悲しみ。その重さを噛み締めずにはいられない。2023/05/16

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