内容説明
知的財産法の世界では、近年のめざましい技術の進歩を背景として、パブリック・ドメインとの境界線上における紛争が多発している。本書では、従来あまり重視されてこなかったパブリック・ドメインを中心に据えて、創作の奨励や産業・文化の発展のため、いかにしてパブリック・ドメインを豊かにし、その利用を確保するのかという観点から、各種の知的財産法の構築を目指す。
目次
第1部 総論
第1章 プロ・イノヴェイションのための市場と法の役割分担:インセンティヴ支援型知的財産法の意義──限定提供データの不正利用行為規制を素材として[田村善之]
I 問題の所在
II 市場と法の役割分担
III ビッグ・データ保護法制導入の際の立法論の紹介
第2部 不正競争防止法
第2章 産業上の創作に関するパブリック・ドメインと不正競争防止法上の商品等表示としての保護[宮脇正晴]
I はじめに
II 特許制度との調整の要否についてのわが国の議論状況
III 米国最高裁が示した「模倣の権利」アプローチ
IV 検討
V おわりに
第3章 標識法における機能性法理[小嶋崇弘]
I はじめに
II 米国商標法における機能性法理
III EU商標制度
IV 検討
第4章 人工知能に特有の知的成果物の営業秘密・限定提供データ該当性[奥邨弘司]
I はじめに
II 営業秘密
III 限定提供データ
IV 具体的当てはめ
V 営業秘密および限定提供データとして保護する利点
第5章 ビッグデータの法的保護をめぐる欧米の議論動向──データプロデューサーの権利の創設提案を中心に[山根崇邦]
I 序
II 欧州
III 米国
IV 結びに代えて
第6章 データの集積・加工の促進と知的財産法によるデータの保護[前田 健]
I はじめに
II データを法的に保護する必要があるのはなぜか
III 知的財産法におけるデータの取り扱い
IV おわりに
第7章 不正競争防止法における理由のない特許権侵害警告──特許権者による裁判外の差止請求と市場競争の自由とのバランスのとり方[駒田泰土]
I 問題の所在
II 権利行使説
III 近年の裁判例
IV ドイツ法の状況
V むすび
第3部 商標法
第8章 商標権侵害訴訟における商標の類似性要件の実証的研究[平澤卓人]
I 問題の所在
II 裁判例の分析
III 結論
第9章 商標的使用論の再構成[宮脇正晴]
I はじめに
II 裁判例における商標的使用論の再構成
III 商標的使用論を再構成すべき理由
IV 再構成の意義
V おわりに
第10章 メタタグ・検索連動型広告における商標の使用[金子敏哉]
I はじめに
II メタタグ・検索連動型広告に関する裁判例の検討
III 検討
IV おわりに
あとがき
索引
初出一覧
執筆者紹介