- ホーム
- > 電子書籍
- > 教養文庫・新書・選書
内容説明
サラリーマン川柳のように、現代では風刺や批判をユーモラスに表現するものとして親しまれている川柳。
しかし、「万歳とあげて行った手を大陸へおいて来た」「手と足をもいだ丸太にしてかへし」といった川柳を通じて、
昭和初期、軍国主義に走る政府を真正面から批判し反戦を訴え続けた作家がいた。
鶴彬、享年二十九。
官憲に捕らえられ、獄中でなお抵抗を続けて憤死した〈川柳界の小林多喜二〉と称される鶴彬とはどのような人物だったのか。
戦後約八十年、再び戦争の空気が漂い始めた今の日本に、反骨の評論家・佐高信が、鶴の生きた時代とその短い生涯、精神を突き付ける!
目次
はじめに――同い年の明暗
一 鶴彬を後世に遺そうとした三人
二 師父、井上剣花坊
三 兄事した田中五呂八との別れ
四 鶴彬の二十九年
五 石川啄木と鶴彬
補章 短歌と俳句の戦争責任
おわりに
参考文献
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ロビン
15
戦時中「万歳とあげて行った手を大陸へおいて来た」「手と足をもいだ丸太にしてかへし」等の反戦川柳を詠み、治安維持法違反で検挙され、特高警察による拷問の果て、赤痢を患って亡くなった鶴彬。彼を中心に、鶴を後世に残そうと尽力した命尾小太郎や澤地久枝、坂本幸四郎のこと、また鶴の師匠井上剣花坊やその妻信子、師兄田中五呂八のことなどにも触れつつ、石川啄木の反戦姿勢や、徳富蘆花の「謀反論」、戦争を賛美した高村光太郎の戦後の厳しい自省と、斎藤茂吉や高浜虚子の無反省を批判するなど「反戦」に貫かれた一書であった。2023/03/24
sasha
5
反戦を詠んで獄で殺された鶴彬の評伝として読むと肩透かしを食らう。鶴彬の周辺の人々、川柳界の流れを描きながら、根底に流れるテーマは「反戦」。藤沢周平による、敗戦後の高村光太郎と斎藤茂吉の対比が興味深い。2023/11/21
sakase
1
『万歳とあげて行った手を大陸へおいて来た』 『手と足をもいだ丸太にしてかへし』2023/07/23
maruriko24
0
『万歳とあげて行った手を大陸へおいて来た』 『手と足をもいだ丸太にしてかへし』 『めかくしをされて阿片を与えられ』 『修身にない孝行で淫売婦』 『正直に働く蟻を食ふけもの』 『やがて墓穴となる蟻の巣を掘る蟻食ひ 』 なかなかしんどい読書だった。 ずしり。 読んだ本、観た映画、すぐ忘れてまう今日この頃やが、これは忘れられん。2023/07/06