内容説明
久しぶりに実家に帰ると、穏健だった親が急に政治に目覚め、YouTubeで右傾的番組の視聴者になり、保守系論壇誌の定期購読者になっていた――。こんな事例があなたの隣りで起きているかもしれない。中にはネット上でのヘイトが昂じて逮捕・裁判の事例が頻発している。そのほとんどが50歳以上の「シニア右翼」なのである。若者を導くべきシニア像は今は昔だ。これは決して一過性の社会現象ではなく、戦前・戦後史が生みだした「鬼っ子」と呼ぶべきものであることが、歴史に通暁した著者の手により明らかにされる。
そして、導火線に一気に火を付けたのは、ネット動画という一撃である。シニア層はネットへの接触歴がこれまで未熟だったことから、リテラシーがきわめて低く、デマや陰謀論に騙されやすい。そんな実態を近年のネット技術史から読み解く。
かつて右翼と「同じ釜の飯を食っていた」鬼才の著者だからこそ、内側から見た右翼の実像をまじえながら論じる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
141
戦後民主主義を享受してきた筈の中高年が、なぜ右翼的になるかを考える。それは、戦前と戦後の連続性を容認し、戦争の公的な総括を一切行ってこなかったこの国で、「戦後民主主義」というものが、如何に不徹底で欺瞞的だったかということの証左だと言う。ネット動画の洗礼を受けて簡単に右傾化するシニアたちは、水戸学的な本来の右翼思想でも保守主義でもないエセ右翼である。何よりも私は、多くのネット右翼に共通する中国・韓国・女性への蔑視の姿勢に、強い嫌悪感を覚える。晩年になって、そういう尊大さに帰結する人生が悲しくないのだろうか。2023/05/21
たまきら
48
「ネット右翼になった父」は、著者が父親を理解することをあきらめたことへの後悔がつまった家族目線の本だったが、1982年生れの著者によるこの本は、また違った立場とはいえ、シニア右翼たちと関わった当事者が怒りをこめて書いたものだ。オフスプリングの「Not the One」は私が若い頃「大人」に感じていた気持ちを代弁していたが、わたしより10歳若い著者が元は同志だと信じていた大人から受けた仕打ちは、もっと深い失望と怒りに満ちている。同時に無関心な全世代への怒りも感じる。私個人は黙っている者こそタチが悪いと思う。2023/12/12
つちのこ
43
かつて右翼の先鋒として名を馳せた著者が右翼と決別した経緯が書かれているが、現在の立ち位置はどうにも微妙だ。未完で終わったという戦後民主主義のツケが、シニア層を中心に右傾化しているという言説には説得力を感じるが、ネトウヨに関しては、必ずしもシニアだけではあるまい。若者の高市政権の支持率をみれば分かる。ただ救いなのは、大多数が過激なヘイトに走ることなく冷静さを持ち合わせている点だろうか。これは今起きている中国との諍いにも表れている。年齢が高くなるにつれSNSを利用する層も限られてくる。テレビや新聞のような⇒2025/12/21
道楽モン
37
シニア右翼は確かにウザい存在であるが、その背後には全世代にわたる圧倒的な数のサイレントマジョリティー『無関心』『無知』『ちっぽけな自我の中の正義』が存在する。こちらの方も恐ろしい。ネトウヨは根拠薄弱な動画を全面的に受け入れる思考停止の超低級リテラシーで、勿論、読書による教養の積み上げは無い。偏向した洗脳装置であるTVや偏向動画を鵜呑みにするばかりか、インプットがそれしか無いから始末悪い。で、正義と権利を叫びヘイトスピーチでアドレナリン分泌。清沢洌『暗黒日記』の戦時中の大衆も関東大震災の朝鮮人虐殺も同根だ。2023/10/04
tomi
32
「ネット右翼」に中高年男性が多いのは何故なのか。「保守」の論客から出発、幻滅して転向した著者が、自身の経験を踏まえながら考察する。そもそも「ネット右翼」は保守でも右翼でもないエセ右翼。「will」のような右翼雑誌の読者かと思ったら、雑誌は買うだけの推しグッズで、YouTubeなどのネット動画でハマるようだ。ネット環境の影響のほかに、戦後民主主義が未完の状態である事が要因と推測している。なるほどと思うが、ネットがない時代からネトウヨ的な差別発言を言う年寄りは少なくなかった。脳の老化も一因のような気がする。 2026/03/05




