内容説明
桐野夏生が描く「バブル」
欲、たぎる地で迎える圧巻のクライマックス
時代はバブル全盛に。東京本社に栄転が決まった望月と結婚した佳那(かな)は、ヤクザの山鼻の愛人・美蘭(みらん)のてほどきで瞬く間に贅沢な暮らしに染まっていく。一方の水矢子(みやこ)は不首尾に終わった受験の余波で、思いがけない流転の生活がスタートする。そして、バブルに陰りが見え始めた頃、若者たちの運命が狂い出す……。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
513
バブル期を舞台にしていても、あくまで主題は個々の女性のパーソナルな部分にあり、上巻からずっと感じていた軽さは、そこが肝ではなかったからだと、読み終わって納得。それにしても展開があっさりしすぎている感があって、特にラスト100頁くらいは、かなり駆け足に思えた。とはいえ、終わりよければすべてよしの言葉通り、物悲しさを残しつつ、タイトルに結実していく上手い締め括り方のおかげで、よい読書タイムだったと満足。こういう目線で描かれるバブル時代もアリだなと最後には肯定的な気持ちで本を閉じることが出来た。2023/05/10
starbro
453
上下巻、650頁弱完読しました。破綻すると解っていても、スリリングな展開、バブル崩壊、宴の跡、哀しく悲惨な結末でした。タイトルがこんな意味だと思いませんでした。私はバブル末期に社会人になったので、あまり恩恵もなく、今現在も真っ当な人生をおくっていますが、バブル全盛期だったら、本書の主人公達のように破綻していたかもしれません(怖) https://mainichibooks.com/books/novel-critic/post-604.html2023/03/06
青乃108号
371
上巻の狂騒と疾走感は下巻に入り一転、地獄絵図を見ているような展開に。正直、上巻を読んでいる時は俺自身も同時代を生きていたため、作品世界に比して当時の、そして今の自分って何てしょうもない、ちんけな生き方をして来たんだろうと大層惨めな気分にもなっていたのだが、この下巻。ここまでとことん突き落とすのか。唯一真面目に堅実に生きてきた水矢子までも。恐ろしい時代だったんだな。大して何にも楽しい事はなかった俺の半生も今生きて何とかやれてるんだからそれはそれで良かったんだろう。皆、大変よね。多分これからも。頑張ろうね。2024/04/09
まちゃ
261
バブルの狂騒に踊った望月と佳那の結末は想定通り。堅実な水矢子の半生は想定外でした。出自に恵まれず悲しい結末を迎えた3人の人生に切なさを感じました。人間の欲や業をテーマにした桐野さんらしい作品でした。Kaminさんの表紙の絵を見て、江口寿史のパパリンコグラスが頭に浮かびました。私のバブルの思い出。2023/03/11
のぶ
239
下巻に入り、佳那は望月と結婚しバブル全盛に東京本社に栄転が決まり、浦安の東京ディズニーランドが見えるマンションで新婚生活を始める。巻の前半部分は景気も良く、望月も派手に稼ぎ、派手に遊んでいた。やがてバブルの時代が終わり、株価の暴落が始まるとそれまで儲けていた人たちの風向きが変わる。望月も例に漏れず顧客から預かった金の返済に追われるようになる。このあたりノンフィクションを読んでいるような印象を持った。盛者必衰。実際に物語に出てくるような姿を自分も見て来た。当時を懐かしく感じながら大変面白く読んだ。2023/02/16