内容説明
東京で挫折、信じかけた新興宗教にも失望した史郎は、故郷に戻り村議となり、人妻との逢瀬を楽しんでいた。幼なじみの仁吾が村長選に立候補すると、改革の理想を語る彼への応援を約束。が、県議から人妻の件で決定的な弱みを握られ、仁吾落選のための不正工作に加担。心を引き裂かれた史郎の、破壊的衝動を描く「幼な子の聖戦」(第162回芥川賞候補作)。ビルの窓拭きを専門にする会社に転職した小春は、仲間同士で命を預けて仕事をする緊張感にのめり込んでいる。ある日、ビル内の盗難事件が原因で責任者を下ろされてしまった権田にひそかに憧れていた小春は、思い切って彼を焼き鳥に誘うが……「天空の絵描きたち」。話題の2編を収録。
目次
幼な子の聖戦
天空の絵描きたち
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ばんだねいっぺい
27
作者と作品を同一視してはいけないが、やさぐれた人なのか?と思ったり。ローカル世界ならではの権力集中してネジ曲がった空間のリアリティーにそうだよなと息をついた。2023/08/02
海燕
10
何かのレビューで知って以来、併録の「天空の絵描きたち」がずっと気になっていた。文芸誌に発表されてから7年余りも書籍化されなかったのは不思議だ。古市氏の芥川賞候補作の参考文献として本作が掲げられ選考委員の間でも波紋を呼んだことが、書籍化と関係しているのか私は知らない。が、とても良い作品だった。ビルの窓を拭く職人たちの世界。危険と隣り合わせの仕事、十分な収入があるわけでもない。仕事ぶりの描写が興味を引くし、彼らの仕事に対する矜持とか死に対する考え方が浮かび出てくる。もっと多くの人に読まれてよい作品だと思う。2023/04/19
くるばび
2
どちらもよかったが、表題作より「天空の絵描きたち」の方が好き。2023/06/15
ポポロ
2
安倍元総理の暗殺の後、あの事件を先取りしていたとの紹介があったので読んでみた。選挙、統一教会、日本会議、そして暗殺があるがたまたま取り上げたパーツが一致していただけだった。著者には書きたいことがあるのだろうけれどそれを思考力の高くない主人公に仮託させることで、十分に書ききれなかったことのエクスキューズにしたような感じでモヤモヤした。天空の絵かきたちはストーリーは興味深かったし、死の唐突さ不条理さを感じさせる点はとてもよかった。結末も読んだときはなんじゃそれはと思ったが、思い出すと綺麗な光景になった。 2023/05/01
カノープス
2
初読み作家。悲劇…そして喜劇。表題作が展開する人の世のくだらなさは、いち村長選挙をめぐるドタバタに矮小化された話ではなく日本そのもの。日本という巨大な村の実相であると感じる。印象に残るのは南部言葉の力強さであり、地の文を標準語にする事は正解だったのか。聖戦とは告発の時点で遂げられた事であり、果たして最終的な暴力の実行まで行くほどだったのか。そこも疑問である。併録作は、市井の名も無き人の意義を語る居酒屋の場面がクライマックス。この言葉に出来ない感覚を言葉にしたのは素晴らしかった。2023/04/02
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