内容説明
ウチダ先生はコラムを書く時、「この文章は今から10年後でもリーダブルだろうか」と自問しながら書いている。連日塗り替えられる時事問題をどれだけの人が記憶しているか? 「AERA」連載の書籍化第3弾。コロナ、東京五輪、旧統一教会問題、安倍氏国葬など。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
117
「AERA」に連載されたコラム集。時事的な内容が多いが、東京五輪強行や大阪万博への批判や、排外主義的な移民政策への懸念など、共感を覚える(私は、五輪という仕組みそのものに懐疑的だが…)。「最も切実に支援を求めているのは、教育と医療と農業」として、いつもながら、先生の教育への憂慮が強調される。教育を象徴する語彙が「めばえ」「わかば」「あすなろ」などから「シラバス(仕様書)」「PDCA」「品質保証」などに変化し、「学校が農園から工場に変わった」という指摘は、「教育の商品化」を憂う内田先生らしい視点だと感じる。2023/05/02
けんとまん1007
70
今、ちょうど、立山連峰からの朝日を眺めながらいる。まさに夜明け。いろいろなことが想い出され、げんなりすることも多いし、ますますその方向性が強くなっているように思う。それでも、夜明けはあると信じている。もちろん、短い時間軸ではなく、長い時間軸で考えてのこと。最後に思ったことは、いつもと同じ。自分の五感を使って感じ・考え、哲学を持ち続けること。2023/04/23
tamami
56
店頭で数ページ試し読みの後思わず買ってしまったが、読み終わると少し苦い思いが残った読書だった。例えば東京オリンピックについて、著者はコロナを理由に、最後まで開催反対の立場であるが、結果としてはその影響はいわれた程ではなく、観客を入れてやっても良かった、という意見もあった位だ。体制側の無謬性を批判する一方で、自己のそれには触れない。というより著者は既に体制の恩恵を十二分に受けている立場ではないか、というのは言い過ぎだろうか。著者のいう良い世の中は永遠に来ないのではないか。批判のみの言説には疲れしか感じない。2023/02/27
tokko
28
2019年から2022年までのコラムをテーマごとに分類。教育や米中問題は他のところでもたくさん読んだので、やはり政治に関するコラムが印象に残る。2019年から2022年というと、安倍、菅、岸田と目まぐるしく首相が変わり、しかも安倍元首相が暗殺され、国葬、政治と宗教問題が噴出といった激動の3年間だった。しかもコロナ問題が並走するような状況で、内田先生は常に冷静に(時には怒りながら)定点観測を続けておられました。コラムも時系列に並べられているので、事後的な視点から読むことができて面白いです。2023/03/11
Mc6ρ助
26
自分がどれほど東京オリンピックやコロナ政策に傷つけられていたか自覚できる読書体験、明らかにその前の安保法制や後の安保三文書の方が新しい戦前を迎えたという点ではインパクトは大きいのだろうと思うのだが、心象はかえがたい。とはいえ失われた30年が決して単純な理由や選択の結果ではなかったことに改めて気がつかされる。「大きな物語」が無効となったというポストモダンに科学技術まで乗っ取られてフクシマで「想定外」と言ってしまった人々が哀しいというのは爺さまの個人的感想に過ぎない。2023/05/12