内容説明
日本人はいつから和服を捨て、洋服を着るようになったのか? 大河ドラマ「西郷どん」で軍装・洋装考証をつとめた著者が、日本人の服装の変遷を、膨大な史料からわかりやすく解説。従来の近代服飾史の通説を覆す内容が満載、あなたの頭の中にある洋服にまつわる情報をアップデートしませんか?
目次
第1章 幕末の海外渡航と洋服との出会い
第2章 欧化政策の表と裏
第3章 衣服改良運動
第4章 服装改善運動
第5章 昭和モダニズムの服装
第6章 国家総力戦と服装
第7章 洋服を着る時代の到来
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
107
戦前生まれの親類の姉妹から、和服は親のお下がりしかなかったと聞いたことがある。当時は学校制服以外の既製服はなく、女性はミシンなどを使い洋服を自製する技術を身につけるのが当然だったと。地方在住者でもそうなのだから、活動しやすい服を求めた都会の若い女性が洋装に傾注したのも無理はない。明治以降の上流階級が政治的要請で洋服を着用するようになる経緯は面白いが、庶民のニーズに適していたからこそ安くて簡単に作れる洋服が広まったのだ。同じものでも地位や収入の違いで理解が異なる例は多いが、服飾史はその最たるものではないか。2023/09/16
樋口佳之
54
白木屋火災のお話はまだネットなど無かった時代に聞いたようなおぼろげな記憶(子ども向け学習雑誌?)もあり、それが訂正されました。/男性に比べ普及が進まなかった理由がいくつか書かれていて、その一つは価格の件なのですが、そも当時の女性にお金の使用に関わる自主的選択権があったのかというのはどうなんでしょう。戦後白物家電が普及期に入るとき、その製品を自分では使わないだろう男たちをどう説得するか電機メーカーが腐心したというお話がある位で。これも神話なのかなあ。2023/08/19
さとうしん
15
制服や女性の服装を中心に検討。洋装の導入は廃藩置県を機に行われ、外見から四民平等を図るという意図があった、特に女性の洋装がコストの問題などでなかなか根付かず、逆にある階層に一旦根付くと戦争に突入しても洋装をやめようとしないなど、面白い見解が随所に盛り込まれている。ただ私が日本の洋装史にこれまで無関心であったこともあり、衣服改良運動の際に朝鮮の袴が資料として参照されたとか、著者の強調したいポイントとはずれた枝葉の部分に興味を持ってしまったが。2022/12/12
月猫夕霧/いのうえそう
7
明治維新以降、和服を着ていた人々が洋服を着るようにどのように変化していったのかを見ていく本です。今までの通説がどのように間違っているかの説明が特に前半には多いのですが、確かに今のようにテレビや動画配信があった時代でもないのに、火事で焼け死ぬ和装の人が多くてもすぐに洋装に切り替える人が沢山いるわけないじゃん、というのは納得です。やはり洋服への切り替えは事件や事故ではなく、洋服に触れた若い人が歳を取ってすべての世代が洋服に触れた世代になることで洋装化が完了したのですね。2023/01/31
n_2_d_6_m_0_p_1
4
まさにそういう意図(学会批判)で出版していることを、あとがきで著者が述べているのだが、それにしたってあまりにも「従来の学説では〜」という行が頻発するので、読みながら辟易してくる。ここまでくると問題意識よりも自分だけがわかっているという、著者の特権意識の方が悪目立ちせざるを得ない。この「俺スゴい」アピールの薄い第六・七章は読み応えがあった。2023/03/25