内容説明
一年前、偶然出会ったお婆さんに会いたい。しかし手掛かりは、庭に良い匂いの沈丁花が咲いていたことと、その庭でお婆さんが発した不可解な言葉だけ――。思わぬトラブルによりサッカー部を辞め鬱屈した日々を送る航大。春を告げる沈丁花の香りに、親切にしてくれたお婆さんのことを思い出し、記憶を頼りにその家を探していたところ出会ったのは、美しい庭を手入れする不愛想な大学生拓海だった。拓海は植物への深い造詣と誠実な心で、航大と共に謎に向き合う。植物が絡むささやかな“事件”を通して周囲の人間関係を見つめなおす、優しさに満ちた連作ミステリ。鮎川哲也賞優秀賞受賞作。/【目次】春の匂い/鉢植えの消失/呪われた花壇/ツタと密室/勿忘草をさがして
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちょろこ
133
植物コージーミステリの一冊。主人公の高校生の日常を取り巻くちょっとした謎を、ひょんなことから知り合ったガーデニング男子大学生&老女とで植物の知識を絡ませながら解き明かすストーリー。流れる日常という穏やかな時間に清々しさが加わり読んでいてずっと心地よかった。自然と相手の心に救いを差し伸べられる人間関係の温かさの傍らで植物に対しての慈しみも感じられる。花の知識、小さな謎解き、小さな優しさが寄り集まって大きな優しさに変わるさまはまるで小さく寄り集まって可憐に咲く花のよう。穏やかに沁みる入るこの感覚、とても好き。2023/11/10
のり
93
5話からなる連作短編。不運なトラブルに巻き込まれ、サッカー部を辞めた高校生の「航大」。一年前に世話になった方に礼を言う為に、記憶を辿りながら探していた時に出会った大学生の「拓海」と祖母の「菊子」。美しい庭をもつ園原家。、その管理は拓海が豊富な知識と、裏付けさせる洞察力。航大が持ち込む、草花に関する難題な事件を解決へと…心を癒やしてくれる一冊。2023/09/12
ゆみねこ
90
部活をやめて鬱屈した日々を送る高校生の航大と、大好きな祖父が遺した庭で花の手入れをする大学生の拓海。ふとしたきっかけで出会った2人が植物が絡むささやかな日常の謎や事件に向き合って行く。植物の丁寧な描写と2人の成長がとても読み心地が良かった。真紀涼介さん、初読み。2023/05/28
ナミのママ
85
自然に囲まれて暮らしてきた作家さんなのだろうか、植物の描写が丁寧で綺麗な文章が気持ち良かった。主人公は2人。部活をやめて無気力な日を送る高校生の航大と、祖父の愛した庭の手入れをする大学生の拓海。植物で繋がる2人の連作短編5話。馴染みのある草花、暮らしの中のミステリ。どの作品も派手さはないものの深く優しい。次の作品も読んでみたい。 【第32回鮎川哲也賞賞優秀賞】2023/05/13
aki☆
84
とても好みだった!花や草木など植物に絡んだ謎を解く連作短編ミステリで、気になる、知りたい、くらいの些細な謎だけど友人の助けになればという思いから、高校生の航大が植物に詳しい大学生の拓海と祖母の菊子さんに相談を持ち込み謎を解いていく。青春物っぽさもあるしウルっと感動もあって温かい気持ちになれた。悩みや憂いを抱えながらも友人や花に心を配れる航大、無愛想だけど誠実で優しい拓海、好奇心旺盛で話好きな菊子さん、みんなとても魅力的。人にも植物にも優しい人達の優しいミステリで凄く良かった。シリーズ化されたら嬉しいな♡2023/10/27