内容説明
東京工業大学で長く教鞭を執り、ロボットコンテストの創始者として知られる著者渾身の書き下ろし仏教書。長年の仏教研究の末に著者は、仏教思想はすべて「一つ」という哲理に貫かれているという視点に辿り着いた。この「一つ」が解れば仏教が解るが、「一つ」を理解するには理性を超えた「直観」が不可欠であるという。仏典や文学作品、コンピューター理論等を読み解きながら、読者を「直観」そして「一つ」へと導いていく。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
南北
43
著者はロボット工学の第一人者であり、ロボットコンテストの創始者として知られていますが、仏教に関する著書があるのは知りませんでした。「仏法は二元性一原論である」という観点でさまざまな問題の本質と現象を解き明かしているだけでなく、日常生活に生かせるヒントの宝庫になるとしています。最後に著者の提唱する「自在学」がこの二元性一原論によって世界のさまざまな問題を解決する原理になるとしています。仏教の知識がゼロの人にはお勧めできませんが、理系の人が見る仏教というのはとても興味深いものでした。2020/11/13
sheemer
18
工学者・科学者でロボコンの創始者であり、仏教研究者でもある著者の、現代に立脚した仏教論と言えると思う。二元性一原論がすべての根本であるとし、その原理的な解説は一章・二章にあり、それ以降はさままな観点から二元性が実は一原であることを解説していく。それが九章まで続き、最後の章は現代に仏法を活かしながらの自在学について論じている(ここは若干軽め)。直観的に二元性一原論は正しいと感じており、科学技術の現代においてどう仏法を活かしていくかのオリエンテーションとして適切と思う。サイエンスの人ほど知ってほしい内容。2024/02/19
izw
10
「ロボット工学と仏教」で森先生がロボット工学の創始者であり、仏教に造詣が深いことを知った。その後「ロボット考学と人間」を読み、これが3冊め。仏教の神髄は「一つ」。二元性一元論とも呼ぶ。相反すると見える現象も「一つ」としてとらえる考え方は、分解・分析を進める科学とは相容れないようだ様々な現象は両側面を持ち、統合して「一つ」になる。それは「色即是空、空即是色」の「即」で表される。この大原理を多方面から説明した後、現代の難問に対応するため二元性一元論を核とする「自在学」を提唱している。ますます仏教に惹かれた。2019/03/06
マウンテンゴリラ
5
一流の工学者にして一流の仏教者でもある著者の言葉は、私のような技術者のはしくれでもあり、仏教に興味を持つ人間にとって、声聞衆に対する菩薩の説教のように心に響いた。本書を通して、何よりも心を動かされ、気付かされたことは、仏教の「一つ」がいかに日常の生活に生かされ得るか、そして、私自身がいかにそれを非日常的な概念としてしか捉えていなかったかということであった。そもそも、技術(物づくり)=物欲への貢献という図式そのものが、物質文明への軽い反発から出た、二元論的決めつけであろう。→(2)2015/07/16
舟江
4
作者も申しているように、仏教の入門書ではない。ある程度の知識がないと、理解することが難しい。よって、理解できた部分と歯が立たない部分があった。2021/07/07