内容説明
早くに夫を亡くしたあとも、ひとり仕立屋を営むレーネ。ある日、黒装束の男が現れ、「ドレスを一着頼みたい」という。店に運ばれてきたのはなぜか腐敗しないという美しい少女の「遺体」だった。初めは気味悪く思っていた彼女だが、採寸のために彼女に触れるうち、「こんな子が、私たちの娘だったら良かった」と思うと愛しさは増してゆき、物憂げな表情をしていた彼女は、日増しに明るさを取り戻していく。だが実は、亡夫に対し、レーネは大きな秘密を抱えていた…(「林檎と贖罪」)。――決して腐敗しない、死せる美少女エリス。目を開けることも、しゃべることもない彼女がもたらすのは、破滅か、祝福か? ダークメルヘンの世界へようこそ。
目次
林檎と贖罪
選ばれざる人々
秘められたメルヘン
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おかだ
30
良い。好みの世界観。図書館で見つけて何気なく手に取ったけど読後気付いた、これシリーズ2作目やった…願わくば記憶を消してちゃんと1作目から読みたい…。黒装束の使者が運ぶ、腐敗しない少女が収められたガラスの棺。彼女の虜になった者は内なる死への悦楽を引きずり出され…といった具合の連作短編。最終章がエピソード0みたいなストーリーだった。カロンが何者なのか知った上で1作目を読むのも面白いかな。上質なダークメルヘンファンタジーの世界、とても好き。2023/04/03
よっち
26
決して腐敗しない、死せる美少女エリス。目を開けることも、しゃべることもない彼女と出会った人々が、そのありようを少しずつ狂わせてゆく第二弾。早くに最愛の夫を亡くしたあとも、ひとり仕立屋を営む未亡人が抱える大きな秘密。修道院の廃墟内で怪しい集まりを繰り返していた伯爵たちの末路。伯爵に拾われ、川のそばの土地管理人として雇われた男。それぞれに形は違えども彼女を見てしまったら、その内に秘めた狂気と暴かれずにはいられなくて、妄執の果ての結末は本人たちにとって悲劇だったのか救済だったのか、いろいろ考えてしまう結末です。2023/01/19
栗山いなり
4
腐敗しない死体・エリスに囚われていく人間達を描いたダークメルヘン小説シリーズ第2巻。死体・エリスの一種の魔性に囚われて破滅していく人々を見せられる物語なんだけど、それがどこか怖かったと感じた2023/02/26
史
3
人を心を思い出を呪いし白雪姫。秘めたるものを暴き、執着を交錯させ、そして数多の炎を消していく。2023/03/06
オノイチカ
2
デビュー作の続編。今作でも硝子の棺に納まる不滅の死体・エリスが、様々な人間の運命を捻じ曲げていく。一作目より嗜虐性は増したものの、筆致はあくまで緻密かつ丁寧でゴシック小説のよう。文字を追う歓びに耽溺させてくれる一冊。2023/02/23