文春e-book<br> パウル・ツェランと中国の天使

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文春e-book
パウル・ツェランと中国の天使

  • ISBN:9784163916361

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内容説明

コロナ禍のベルリン。若き研究者のパトリックはカフェで、ツェランを愛読する謎めいた中国系の男性に出会う。
“死のフーガ”“糸の太陽たち”“子午線”……2人は想像力を駆使しながらツェランの詩の世界に接近していく。
世界文学の旗手とツェラン研究の第一人者による「注釈付き翻訳小説」。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

アキ

115
パウル・ツェランの研究者パトリックと祖父がパリで中国医学の開業医だったレオ=エリック=クーとのカフェでの会話から成る小説。両親がウクライナ人でユダヤ系のためナチスによって死に至らされ、自らは精神病を患いパリで自死した詩人の言葉は「左」と書かれていてもアウシュビッツで左右の列で生死が別れた体験を裏打ちすることを、訳者の181にも及ぶ訳注で知る。地球の表面には子午線が走り、身体には中国医学では経路がある。解剖学の図版に書き込まれた言葉に呼応し「生命の樹をともなう小脳の虫」とする章で、解剖学用語の見方が変わる。2023/02/02

buchipanda3

101
ドイツ語を母語とするユダヤ人の詩人ツェランの言霊に多和田葉子の言語感性が共鳴したかのような物語。興味深く、そして面白かった。それは真摯であり、言葉遊戯のユーモアがあり、言語という不可思議で不可欠なものの世界を彷徨う愉悦に溢れていた。人は言葉を生きる。しかしその深層に触れ、観念に囚われると言葉に溺れ不安に苛まれる。言葉を食べる、消化、昇華、唱歌する。文字を歌い、怒り、痛み、不安を流れさせ滞らせない。それが詩人。それは一言語に留まらない。言語の境界で、母親と母語と心象を歌った詩人の声をもっと読みたいと思った。2023/12/20

どんぐり

92
朝の通勤経路でいつも同じ人と出会う。道をまっすぐ左に右にくねくねと駅まで向かう。彼は道を曲がるとき、必ず90度で進路を変更する。それに対して私は最短距離の45度で歩を進める。歩く速度は彼のほうが若干速いものの、最短距離を歩く自分はすぐに追いつくことになる。私は彼のことを「直角君」と呼んでいる。本書に出てくる主人公パトリックは、道を歩くと右に曲がることができず、必ず左に歩を進める。すぐそばのカフェに行くのに、3回も角を左に曲がり、店にたどりつく。この本も、歩き方(読み方)のルールがあるようだ。→2024/03/01

まちゃ

73
表紙の糸かけ曼荼羅にひかれて手にした一冊。パウル・ツェランや彼の詩についての知識が全くなかったので敷居の高い読書となりました。内容はさっぱり理解できませんでした。多和田氏がツェランの詩を縦横無尽に織り込んだドイツ語のテキストを関口氏が日本語に翻訳。学生時代に第二外国語でドイツ語を学んだはずだけど、もうこれしか覚えてない。「ich liebe dich」2023/02/15

榊原 香織

67
難解 多和田洋子がドイツ語で書いた小説の日本語訳。 詩人ツェランもフェルデンクライスもウクライナ生まれのユダヤ系なんですね 3分の1が語注2023/07/07

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