内容説明
世界初の近代的総力戦となった第一次世界大戦において、ドイツ軍は巨大な飛行船を兵器として多数運用した。その数は百隻を優に超える。彼女たちは劣勢に立たされた祖国を救うゲームチェンジャーたることを期待され、多岐に渡る任務に就いた。戦略爆撃、対地・対艦攻撃、哨戒・偵察、輸送…新時代の航空戦の幕開けだ。本書は、本邦唯一の「兵器としての飛行船」の入門書として、飛行船の発展、各部メカニズム、ドイツ軍飛行船の戦術・運用、組織・編制、基地などのインフラ、主要な戦闘とその帰結、関連する著名な技術者・軍人、後世の軍事・航空への影響などを、カラーイラストや写真を多数交えつつ、詳解する。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
印度 洋一郎
5
第一次世界大戦時、ドイツ軍が編成した飛行船部隊の戦いを網羅した貴重な内容。ツェッペリン伯爵による飛行船の実用化への道から、大戦勃発による急速な戦力化、各戦線での激闘と敵英国の対策によって打ち破られていくまでの、僅か数年間の栄光と没落の歴史を多方面から解説している。飛行船の構造、運用、部隊編成、そして戦闘記録をB5版の大きな図版で当時の写真、絵葉書、イラスト(写真は細部が不鮮明なこともある)も駆使しながら見せる。よく知られているイギリスへの戦略爆撃は、当初の戦術使用が上手くいかず、消去法で採用されたのだった2023/01/21
相馬
3
第一次世界大戦のドイツ軍用飛行船の記録。技術と発展、運用、戦い、といったことが詳しく書かれていて、貴重な記録となっている。2023/10/01
たい
3
すごく面白くて、とてもわかりやすい。機体解説から運用、戦歴まで幅広くカバーされている上に、それぞれが具体的にイメージできるほど詳細で、更にその中で「飛行船という装置の性質」「発展の方向性」が何度も示されている。このレベルの完成度は他の分野でも中々無いのでは。飛行船のことを全く知らない状態から読み始めていたのに、読み終わる頃にはとても理解できた満足感がある。 文章も読みやすいし、興味をそそるコラムも充実していて楽しい。個人的には、初期の戦略爆撃に関して経緯や反応を含めて知ることができたのも嬉しかった。2023/02/19
ひっし~
1
最近見たとあるアニメで飛行船から爆弾を投下するシーンがあったので、史実はどうだったんだろうと興味が湧いて、探して読んでみました。いや、「入門編」とありますが、開発前史から詳細な運用方法、そしてもちろん実戦での功績と凋落に至るまでこと細かく書かれていて、これを読めば軍用飛行船「マニア」の入り口に立てる気がします。ちなみに史実で投下した爆弾は、アニメで描かれたドラム缶のようなものではなく、ちゃんと安定翼のついた爆弾らしい形状のものだったようですね。あのドラム缶は、帝国海軍の対潜爆雷の形状に近いんでは…w2024/03/03