内容説明
オンナの登山道は一本道ではない。あの日見た景色は、いつだって胸のなかに。絡み合い、すれ違う、5人の女たちの物語。
【内容】岩壁の向こう側|翼と引き換えにささやかな安定を得た宇井優香。ふとした会話が濁らせていた山の気配を呼び起こし、4年ぶりの登山を決意する。◆クライミングジム・シンデレラ|夫とは何もかも合わないが、それ以外は恵まれている。専業主婦の二階敏子は、今のルートが修復できないものだと気づき、かぼちゃ色のアウディを走らせる。◆幻の縦走計画|普通すぎる自分にコンプレックスを抱える見方めぐみ。公私ともにやりがいを見出し、自らの力で道を切り拓こうと歩みはじめたそのとき、自身の体の変化を感じ取る。◆ザイル・パートナー|「恋以外には図々しい年頃」と自分を諭す志村千穂。クライミングに情熱を燃やす亨に思いを寄せるなか、後輩から予期せぬプロポーズを受ける。◆母がいた八ヶ岳|物心つく前に母を亡くした後藤六実。二十歳を前に、未来に向けて薄情になる覚悟を決めた六実は、遺されたウェアを身に付け、母の命を奪った山へ向かう。
【著者】1972年、東京都生まれ、札幌市在住。山系イラストレーター。20代のカナダ旅行をきっかけに山に目覚める。以来、読者モデルとして山岳雑誌に寄稿するほか、山小屋でのアルバイト経験をもとに描いたコミックエッセイで山の魅力を伝えている。著書『悩んだときは山に行け!』(平凡社)など多数。本書が初めての小説作品となる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ぶんこ
45
20代後半から40代までの女性たちが山を登る。それぞれにきっかけがあって、悩むことも多いけれど、自分の力で山に登る楽しみがあるのは救いなのかもしれない。特に単なる山登りではなくクライミングをする女性は、私からは普通の登山好きとは一線を画している人との位置づけでしたが、そこまで大袈裟ではないのかなと思える内容でした。山登りをする人たちが主人公でしたが、山登りの醍醐味や苦しさを伝える小説ではなかったです。とりとめのない感想になってしまいました。2022/10/13
ころにゃん
8
山好きの女性の5つの短編集 岸壁の向こう側/クライミング・ジム/幻の縦走計画/ザイル・パートナー/母がいた八ヶ岳2022/12/23
りょう
4
著者さんは、山登り関係のイラストマンガなどで、存じ上げていたんですけど、活字だけの本??と思ったら、初の小説らしいです。山を絡めた短編集になっていて、おお!この分野でも頑張って欲しいなあと思います。2022/06/22
ふらら
3
山小屋で鈴木さんのイラストを見たことはあるけど、小説は初めて(実際、初めての小説作品)。三ツ峠山、八ヶ岳の大同心、硫黄岳。山はいつもそこにあって、変わっていくのは人間の方。仕事、結婚、妊娠、出生、いろんなモヤモヤを抱える女性のお話でした。山で解放されるかな?2022/08/15
むっち
3
面白かった。マウンテンガールズの話です。「山岳小説」ではありません。銀嶺の人は、男性が書いた女性山岳家の話だけど、こちらは、女性として生きづらさを抱えていたり、自分が何者であるのかが分からないもどかしさを抱えて生きづらい女性たちが、恋したり、熟年離婚の危機を迎えたり、妊娠したり婚約したり、無くなった母親の記憶を探ったを山を媒介にして乗り越える物語(あるものは悟り、あるものはこだわることのアホらしさに気付いた?)男性作家の女性登山家の話とは一線を画す「現代女性版山小説」という分類でどうでしょうか。2022/08/05
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