内容説明
優等生がひた走る本線のコースばかりが人生じゃない。ひとつ、どこか、生きるうえで不便な、生きにくい部分を守り育てていくことも、大切なんだ。勝てばいい、これでは下郎の生き方だ……。著者の別名は雀聖・阿佐田哲也。いくたびか人生の裏街道に踏み迷い、勝負の修羅場もくぐり抜けてきた。愚かしくて不格好な人間が生きていくうえでの魂の技術とセオリーを静かに語った名著。(解説・西部邁)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kaizen@名古屋de朝活読書会
161
麻雀に代表できる人生模様。淡々とした書き口に人生観が溢れる。破天荒な人生の最後が文庫なんてすばらしい。「9勝6敗を目指す」できない。「1勝9敗」を目指すのがせいいっぱい。窮鼠猫を噛むのが自分の目標。阿佐田哲也(色川武大)さんの雑誌の記事をよく拝見していました。あなたは精神力を持っていて、文筆の世界で勝てたからいい。全然劣等生じゃないと外野からは感じる。2013/06/19
ゴンゾウ@新潮部
108
自称劣等生の阿佐田哲也さんこと色川武大さん。博打から身につけた独自の人生観、処世術を論ずる。9勝6敗の法則、運の貸し借り、負ける方法などなど、とても興味深い。人生程々に身の丈あった生き方でいいんだと 言われているようで非常に楽になった。【新潮文庫の100冊 2018】2018/07/10
扉のこちら側
87
2018年292冊め。「私は不良少年だから。劣等生だから」の言葉が繰り返される中で語られる処世術。破天荒な雀聖・阿佐田哲也の印象が強いので、思ったよりも柔らかい口調に毒気を抜かれてすらすら読んでしまった。ベストな結果を出すための無理よりも、モアベターな生き方でもよいのではないかと許してくれるようだ。2018/07/09
えみ
67
自分の人生しかどう頑張ったって生きることができないから、他人の人生論を聞くのは面白い。ましてそれが自分とは全く違う経験をしてきた人、見てきた人だったなら尚更興味深い。著者は勝負師と生きてきた雀聖・阿佐田哲也の名でも知られる色川武大さん。普通の生き方などどこにもない、一人一人の人生が特別なんだと語る口調は優しい。冷静沈着と思わせて、内には熱い情熱を秘めていた。これは授業、常に大小勝負をしながら生きる私たちへ人生の心構えを教えてくれる一種の授業だ。勝ち続けることだけが成功じゃない…という言葉の説得力が凄い。2022/02/15
今ごろ『エルピス』を観て感動する寺
66
久しぶりにきちんと本を読んだ気分。というのも、私には速読ができない本だった。著者(いねむり先生だ)と対話している感じ。共感したり、疑問を感じたり、反論が浮かんだり、励まされたり、飲み込めたり、理解できなかったり、厳しかったり、優しかったり。運に重きを置く意見は、ギャンブラー特有のものか。魅力的なのは著者の自伝的部分、そして小さめの活字に和田誠の可愛らしいカット。加えて西部遇の解説は本文の理解を助ける親切な内容。私の好きな文庫本の一冊になった。内容共々、本として魅力的だ。2012/02/15