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内容説明
貧乏なのに、紙幣の顔。生まれは裕福、晩年は借金三昧。いくら稼ぎ、いくら借り、何を買い、何を思ったのか?金銭事情で読み解く、日本初の女性職業作家の新しい姿。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kawa
35
「奇跡の十四ヶ月」と称され病没までの短期間に「たけくらべ」等の名作を連発した樋口一葉の生涯を経済面から赤裸々に描く。山梨の農村を出奔した父母、幕末の荒波の中それなりの成功を収めるが、明治の世で事業の目論見違いや家族の病気で徐々に困窮していく。父親の死後、戸主となった彼女も引き継いだ借金生活を文筆業でしのごうとするがうまくいかない。そんな中、幸か不幸か当時の最底層の人々の生活を知り、それらをリアルに描くことが傑作小説誕生の原動力となる。彼女の人生を振り返りつつ、維新前後の経済情勢も垣間見れる興味深い良書だ。2023/02/06
tom
21
書名が気になり借りて来る。一葉の残した日記をベースにして、彼女の経済生活を分析する。宵越しの金がない。当然のようにして借金する。借金を頼む人が来る。そうですかと、金もないのに貸してしまう。知人が訪問する。鰻やら寿司をご馳走する。母や妹と女浄瑠璃を聞きに行く。著者は、一葉の経済観念のなさを嘆く・・・。しかし、一葉は貧乏暮らしの経験があったからこそ、周りの女性作家とは異なるテーマを得ることができ、5000円札に登場するまでの社会的評価を得ることができた。これが著者の結論。2023/04/01
detu
19
図書館新刊棚より。なぜか『樋口一葉』とあるだけで反応してしまう。言うほど一葉ずきでもないのに。たけくらべ、大つごもり、など有名所をかじったくらい。それもよく分からなかった、というのが本音。五千円札で初の女性肖像画になった。著者いわく「借金まみれで貧困に苦しんだ一葉がお札の肖像画に使われるなんてあの世で苦笑いしてるかも」とにかく金銭感覚が異常だ、としか言いようがない。奇跡の14ヶ月と言われる末期についての考察はなるほどと頷く。貧困生活がなければ珠玉の名作は生まれ得なかったと。改めて読み返してみたい、一葉。2022/12/26
ぽけっとももんが
13
五千円の顔、樋口一葉は24歳で亡くなるまで、それはもう赤貧洗うが如しの生活。幼い頃はそこそこいい暮らしだったようだけれども、兄が、父が亡くなり若いというかまだ少女のような一葉が戸主になり、母や妹との生活を支える。もう、不憫でならない。それにしても明治時代、返す当てのない金を借り、その中から返ってくる宛のない金を貸し、苦しい中でもご馳走したり香典のためにまた借りたり、自由なんだかどうなんだかもう。小説家として上向きかけたときにはもう病魔に蝕まれていた。最期、義太夫聞きに行ったり楽しかったのならよかったよ。2024/06/20
Matoka
13
16才で樋口家戸主となり、17才で父を亡くし母と妹を戸主として養うことに。(今でいうヤングケアラー?)当時、女性がつける職業は少なく貧困から抜け出すために小説家を目指す。ただ次第に目的はお金ではなく千年先にも名前が残るような自分でも納得のいく文章を書くことへと変わっていく。借金を重ねつつも客人を鰻でもてなしたり寄席に行ったりとお金の管理ができる人が家族の中に1人もいないので借金はふくらむばかり。こんなにもお金に苦労した人が今やお札の顔になるという…。彼女が24才という若さで亡くなったことも知らなかった。2023/04/14