講談社学術文庫<br> 日本の近代仏教 思想と歴史

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講談社学術文庫
日本の近代仏教 思想と歴史

  • 著者名:末木文美士【著】
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  • 講談社(2022/11発売)
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  • ISBN:9784065297261

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内容説明

「近代仏教」とはなにか? 「伝統(あるいは古典)仏教」とはなにか?
十九世紀以来の欧米やアジア各地の仏教をみると、共通する同時代的な特徴がある。仏教は近代になって、グローバル化したのである。その中で、日本の仏教も大きな変化を被った。
浄土系の思想を、清沢満之の思想を見直し、その弟子である曽我量深の初期思想の持つ可能性を検討した。また、近代日本の親鸞理解に大きな影響を与えた倉田百三の親鸞理解の特性を検証し、後年の倉田のファシズムへの傾倒の必然性を示した。
日蓮系の思想にもっとも影響力の強かった田中智学を検討し、一見国家主義的と見られるその国体論が、じつは仏教と国家の間の矛盾に揺れていたことを解明する。
また、戦後の創価学会の価値観を思想的に明確にしようとした松戸行雄の凡夫本仏論について検討し、世俗化の進む現代社会の中での仏教思想のあり方を考察した。
近代における禅思想を代表する鈴木大拙は、その評価が全面賛美か全面批判かの両極に分かれている。一批判すべきところと評価すべき点に検討を加えた。キーワードは、「日本的」と「中国的」との対比である。
そして、近代の仏教研究の問題点を、二点に絞って検討する。日本史学者として著名な家永三郎の日本仏教の扱い方を、批判的に検討してみた。また、日本では大乗仏教が優れているということが常識のように考えられているが、そこに問題がないかということを、宮本正尊という一学者の説の展開を中心に追ってみた。
私たちの仏教のイメージが、明治以降にどのようなプロセスを経てきたのかを解明し、昨今の仏教研究の基礎を知るための一冊でもある。

*本書は、『思想としての近代仏教』(中公選書)を底本にし、「仏教方法論と研究史」「近代における仏教辞典の編纂」「大乗仏教の実践--研究状況をめぐって」を割愛し、改題をした。

【目次より】
序章 伝統と近代

I 浄土思想の近代
第一章 清沢満之研究の今――「近代仏教」を超えられるか?
第二章 宗派の壁は超えられるか
第三章 迷走する親鸞
第四章 愛の求道者――倉田百三

II 日蓮思想の展開
第五章 国家・国体・天皇と日蓮思想――田中智学を中心に
第六章 世俗化と日蓮仏教――松戸行雄の「凡夫本仏論」をめぐって

III 鈴木大拙と霊性論
第七章 大拙批判再考
第八章 鈴木大拙における「日本的」と「中国的」――『日本的霊性』を中心に

IV 日本仏教と大乗仏教
第九章 家永三郎と戦後仏教史学
第十章 大乗非仏説論から大乗仏教成立論へ――近代日本の大乗仏教言説

終章 今、近代仏教を問う

目次

序章 伝統と近代
一 近代仏教とは何か?
二 伝統から近代へ
三 近代仏教の重層性
四 伝統の再解釈
五 本書の意図するもの
I 浄土思想の近代
第一章 清沢満之研究の今――「近代仏教」を超えられるか?
はじめに――清沢満之研究の動向
一 清沢満之とは誰のことか
二 近代という視点
三 近代は超えられるか
四 清沢をどう読むか
むすび
第二章 宗派の壁は超えられるか
はじめに
一 曽我量深と精神主義
二 曽我量深の「日蓮論」
三 曽我の思想の展開
第三章 迷走する親鸞
一 大正思想史の困難
二 『出家とその弟子』の概要
三 恋愛と求道と――『出家とその弟子』の思想
四 体験と遍歴――『出家とその弟子』の背景とその後
第四章 愛の求道者――倉田百三
一 恋愛とファシズムの狭間で
二 異性という他者
三 性と愛の葛藤
II 日蓮思想の展開
第五章 国家・国体・天皇と日蓮思想――田中智学を中心に
一 国体論の地平――『国体の本義』
二 一九一一年の転換
三 智学の根本思想と国体論
四 「国体学」の完成と逸脱
五 智学から里見岸雄へ
第六章 世俗化と日蓮仏教――松戸行雄の「凡夫本仏論」をめぐって
一 社会参加と仏教思想
二 凡夫本仏論と「人間主義」
三 凡夫本仏論と天台=日蓮教学
四 凡夫本仏論と本覚思想
III 鈴木大拙と霊性論
第七章 大拙批判再考
一 大拙の多面性と大拙批判
二 初期の大乗仏教理解をめぐって
三 戦争とナショナリズムをめぐって
四 融通無碍な表現をめぐって
第八章 鈴木大拙における「日本的」と「中国的」――『日本的霊性』を中心に
一 鈴木大拙と『日本的霊性』について
二 大拙と中国
三 「霊性」の普遍性と特殊性
四 「即y非の論理」と「人(にん)」――大拙の中国禅思想理解
IV 日本仏教と大乗仏教
第九章 家永三郎と戦後仏教史学
一 家永史学における古代・中世思想史の位置づけ
二 基本構図としての『日本思想史に於ける否定の論理の発達』
三 『否定の論理』の展開
四 『否定の論理』再考
第十章 大乗非仏説論から大乗仏教成立論へ――近代日本の大乗仏教言説
一 大乗非仏説論の護教性
二 護教と時局――宮本正尊の大乗仏教論
三 護教論と時局論は超えられるか
終章 今、近代仏教を問う
一 近代仏教の忘却
二 近代仏教の見直しへ
学術文庫

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

榊原 香織

62
少々難しい。清沢満之なんて知らなかったし。倉田百三が恋愛→仏教→ファシズムとなるのはわかりやすかった(なんでそうなる感はあるが) 鈴木大拙が最近やや批判されだしてるようで、そこらへんは読んでみたい2023/02/15

ゆう

12
明治以降の日本仏教は、近代国家の成立とともに、いかに「宗教としての自立」を果たすかが問われた。近代西洋に対応するため、「仏教は哲学である」「理性や科学に親和的である」「内面的修養・自己啓発としての宗教である」といった方向性が打ち出され、仏教の脱神秘化が進行した。その結果、仏教は知識人向けの内面的宗教へと変貌していく。2025/06/09

yone

3
日本近代仏教の概説というよりも、何人かの人物についての論文集といった感じ。それなりの知識が前提とされるもので、初学者にはちょっと歯が立たない感じでした。大拙とナショナリズムなどは興味深い。2022/12/03

bijutsushitan

1
著者の論考を再録しつつ、あまりに専門的すぎる内容は削って読みやすく編集したもの。なので基本は学術書なのだが、初心者でも読めるレベルになっている。とくに天皇制と仏教という矛盾するはずの両者が近代において同居できたのはなぜかという序章の指摘には目を見開いた。ここだけでも読む価値があるし、鎌倉新仏教中心主義のような仏教研究のバイアスについてなど史学史的な指摘も多く、入りには良い本だと思う。2023/04/21

JF1RLN

1
全体的に記述が難しかった印象。序章で「近代仏教とは何か」と節があり、なにをもって近代仏教かというと、とりあえずロペス氏の論文に依拠するとのことらしい。その上で日本という限定的な地域でのこととして、浄土、日蓮、禅のそれぞれの近代における代表的な知識層による思想の歴史をまとめてる感じ。この本は問題提起を目的としているとのことで、近代仏教の研究者に対して問題提起してる感じなのかな、と感じながら読み終わり。2023/04/17

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