文春e-book<br> この父ありて 娘たちの歳月

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文春e-book
この父ありて 娘たちの歳月

  • 著者名:梯久美子【著】
  • 価格 ¥1,899(本体¥1,727)
  • 文藝春秋(2022/10発売)
  • ポイント 17pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784163916095

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内容説明

石牟礼道子、茨木のり子、島尾ミホ、田辺聖子、辺見じゅん……。
不朽の名作を生んだ9人の女性作家たち。
唯一無二の父娘(おやこ)関係が生んだ、彼女たちの強く、しなやかな生涯。

『狂うひと』『原民喜』『サガレン』など、話題作を発表し続けるノンフィクション作家が紡ぐ、豊穣たる父娘の物語(ナイン・ストーリーズ)。

目次

・渡辺和子
 目の前で父を惨殺された娘はなぜ、「あの場にいられてよかった」と語ったのか?

・齋藤 史
 二・二六事件で父は投獄された。その死後、天皇と対面した娘が抱いた感慨とは――。

・島尾ミホ
 慈愛に満ちた父を捨て、娘は幸薄い結婚を選んでしまい、それを悔い続けた……。

・石垣りん
 四人目の妻に甘えて暮らす、老いた父。嫌悪の中で、それでも娘は家族を養い続けた。

・茨木のり子
 時代に先駆けて「女の自立」を説いた父の教えを、娘は生涯貫いた。

・田辺聖子
 終戦後の混乱と窮乏のなかで病み衰えた父の弱さを、娘は受け入れられなかった。

・辺見じゅん
 父の望む人生を捨てた娘は、父の時代――戦争の物語を語り継ぐことを仕事とした。

・萩原葉子
 私は、父・朔太郎の犠牲者だった――。書かずには死ねないとの一念が、娘を作家にした。

・石牟礼道子
 貧しく苦しい生活の中でも自前の哲学を生きた父を、娘は生涯の範とした。 

・「書く女」とその父 あとがきにかえて

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

いつでも母さん

172
父の所為で、父のおかげで・・父と娘。娘から見た父―9人の書く女―渡辺和子、斎藤史、島尾ミホ、石垣りん、茨木のり子、田辺聖子、辺見じゅん、萩原葉子、石牟礼道子―軍国主義、戦時下、貧富、夫婦、土地柄、恩讐、愛憎・・時代もあっただろう、そのどれからも生き切る事を読む。娘として人として捉えた描写が堪らない。そして『この父ありて』と云うタイトルがしっくりくる。面白い物を読んだ。2022/11/17

trazom

153
とてもいい本だと思う。渡辺和子/齋藤史/島尾ミホ/石垣りん/茨木のり子/田辺聖子/辺見じゅん/萩原葉子/石牟礼道子さんとその父の物語。戦後の難しい時代を生き抜いた九人の壮絶な生き様が、深く胸に沁みる。深い愛情を抱きながらも、父を一人の人間として客観的に凝視できるのが、彼女たちが一流の文学者である証でもある。父の生前に、そういう父娘関係に到達することは容易ではないが、でも、そんな日が来ることを願って、「がまんしておくれ、じきに私は片づくから」(石垣りんさんの父)という気持ちで、娘と関わっていこうと思う。2022/12/03

ちゃちゃ

116
文筆家となった娘たちにとって、己れの生の礎を築いた父親とは如何なる存在だったのか。著者は多くの文献に当たり丹念に取材を重ねながら、両者の関係性に鋭く肉薄する。9人の娘たち(作家や詩人・歌人)は一流の「書き手」でもある。父親の中には、不遇な境遇や時代の波に翻弄され、不如意な生き方をせざるを得なかった者もいる。愛情や尊敬、憎悪や嫌悪、憧憬や失望…。娘たちは父への思いを「書く」ことで相対化し、作品へと昇華させ乗り超えていった。その内に秘めたマグマのような熱を、著者は巧みに掬い上げた。心にズシンと響く良書だ。2023/04/03

kaoru

102
渡辺和子、斎藤史、茨木のり子、辺見じゅん、萩原葉子、石牟礼道子など9人の書き手と父の関係を綴る書。一人に一冊を費やしても良いのではと思うほど濃密な人生の数々だ。2・26事件で父錠太郎が犠牲となった修道女渡辺和子、事件に関わった父が収監された歌人斎藤史。昭和天皇に向け峻烈な詩を書いた茨木のり子。優れた父を持ち感化された女性もいれば家や父の犠牲になった女性もいる。まだまだ父権の強かった昭和、書くことで自分をこの世に繋ぎ止めた女性たちの強靭さに驚くとともに、父という存在が相対的に軽くなった現代を生きる女性との→2022/12/04

どんぐり

101
この父があって存在した女性9人の評伝。いずれも「書く女性」が取り上げられている。二・二六事件で父親の凄惨な死を8歳の頃に至近距離から目撃した渡辺和子は、「私は父の最期のときを見守るために、この世に生を享けたのかもしれないと思うときがございます」と生前著者に語っている。それに対して二・二六事件で父親を投獄された歌人の齋藤史は、昭和天皇にこだわりを抱き続け、それを歌に詠んで発表している。この2篇を読むことで、まず圧倒される。→2023/03/12

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