筑摩選書<br> 雇用か賃金か 日本の選択

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筑摩選書
雇用か賃金か 日本の選択

  • 著者名:首藤若菜【著者】
  • 価格 ¥1,485(本体¥1,350)
  • 筑摩書房(2022/10発売)
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  • ISBN:9784480017550

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内容説明

2020年、新型コロナウイルスの感染拡大により、航空業界は大きな打撃を受けた。売上が大幅に減ったなかで、これまで通り雇用を維持して賃金を払い続ければ会社が潰れる。「クビか、賃下げか」。世界中の航空会社において、労使がこの二極の間でギリギリの調整を行っていた。従来、日本は賃金引き下げが速く、人員削減が遅いとされてきた。それは今も変わらないのか。コロナ禍への対応の国際比較と、長期的に労働需要が減少した百貨店の事例から、日本の雇用調整の内実を明らかにする。

目次

はじめに
第一章 航空業界の苦境──ANAグループの事例
1 コロナに立ち向かう
緊急経済対策
飛べない翼
対象とする企業と労働組合
2 日本の空で何が起きたか
消えた観光客
一時休業の開始
新卒採用の停止
3 雇用を守るため、賃金を削る
一時金の大幅カット
「生活が苦しい」
期間限定の対応策
在籍出向の拡大
誰がどう出向を決めるのか
4 人員の削減
希望退職者の募集開始
なぜ「雇用を守る」のか
仕事の内製化と雇用喪失
第二章 リストラの断行──アメリカ、イギリス、ドイツの事例
1 アメリカ
政府の支援策
自発的な一時休業
自発的な休業・退職プログラム
解雇通知の送付
一時解雇とは
賃金を引き下げ、一時解雇を回避する
「もっとも悲しい日」
雇用か、賃金か
職場復帰へ
賃上げ交渉
2 イギリス
雇用保護から人員削減へ
労使の応酬
労働条件の引き下げ
ストライキ
3 ドイツ
人員削減計画の発表
二万二〇〇〇人が余剰に
人件費削減
二〇二一年以降
第三章 雇用を削るか、賃金を削るか──日本と欧米の比較
1 概念の整理
経済の変動と雇用の安定の間で
賃金調整
雇用調整
雇用と失業
2 パンデミック下の賃金調整
雇用を維持し、賃金を下げた日・独・英
賃金水準の保護を求めた米労組
柔軟性のある賃金体系
変動給と賃金調整
3 雇用政策の影響
雇用継続を支援する各国の制度
雇用調整給付金の誕生
雇調金は過剰労働力をため込む装置か
4 雇用調整の速さと規模
欧米で速く、日本で遅い
アメリカで多く、日本で少ない
数年がかりで雇用調整
下請け企業での雇用喪失
中小企業の雇用調整は欧米並み
自発的か、強制的か
5 需要の戻りに対応できるか
景気の回復と空港の混乱
正常化に向けた調整の遅れ
回復期には雇用継続が有利
賃金水準停滞の弊害も
第四章 長期的な雇用調整──百貨店の事例
1 出向と転籍の活用
短期的雇用調整と長期的雇用調整
リーマンショック後に増えた雇用調整
配置転換がもたらす雇用保護と雇用喪失
出向とは
長期的な雇用調整としての出向
2 百貨店における雇用維持と出向
店舗閉鎖と雇用調整
従業員・労働組合の反応
労組が出向先の労働条件を確認
百貨店から銀行へ
新卒採用の継続、賃金の維持
3 長期雇用の光と影
会社が雇用の場を提供し続ける「本籍主義」
意に沿わない配転・出向
誰が雇用の調整弁なのか
第五章 働き続けることを保障する社会へ
1 企業レベルの雇用保障
日本の雇用調整の特徴
雇用調整の速度
「雇用を守る」とは何か
休業手当をめぐって
2 社会レベルの雇用保障
労働力の移動
賃金と労働のミスマッチ
ミスマッチの解消のために
あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

バーニング

2
日米英の航空会社がCOVID-19にどう対応したかを軸に雇用調整のむずかしさ(完璧な方法は存在しない)を具体的に提示する一冊。日本のANAに関しては極力雇用を守ろうと努力したが、グループ内の雇用は守れても委託などグループ外の雇用は守れなかったこと、雇用を守っても賃金は守れなかったことで離職を生んだことなどが特徴として挙げられている。後半では出向を手段として用いた業種として百貨店や居酒屋などが挙げられるが、出向受け入れ先との調整は容易ではなかったようだ。2024/09/28

takao

2
ふむ2023/06/21

かんちゃん

2
雇用調整(賃金調整を含む)がコロナ禍においてどのようになされてきたのかについて、実態調査を(ルポではなく)研究成果をしてまとめている点で珍しい書籍。日本の場合は、短期的調整は請負関係の中で生じやすく、より中長期的は出向等の解雇を伴わない人材流動が行われてきた。他方で、その範囲はグループ内外や労働環境によって変動するため、このような流動の外側にいる産業における雇用調整はそう簡単ではない、労働条件整備、訓練機会とその間のセーフティネットが重要になると指摘する。2022/11/23

ぽん

1
前半2章はニュース記事のまとめみたいなもので、資料発見や分析のすごさはない。後半から研究の紹介もあり、面白くなるのはここから。労務コストの削減手段として雇用調整・賃金調整の双方があることを踏まえ、それぞれの特徴・功罪を論じる。雇用削減は一面ではリスク回避だが、需要が戻ったときに(休業と違って)すぐに従業員を増やせないという別の経営リスクもあるという指摘などが興味を引いたところか。2023/05/16

お抹茶

1
コロナによる雇用調整について,特に国内外の航空業界の状況を労使へのインタビュー調査などから記していく。欧米の一時解雇という雇用慣行がどのようなものか,日本の雇用調整助成金のように雇用を優先する慣行とどう違いどこが共通しているのか,ということが書かれている。「10割の休業手当では,休業している者と同一の収入を得るのは不公平という声もあり,生活保障と公平性の担保に悩む」というように,現場の生の声に近い情報を残しているという点でも,コロナが過ぎ去って振り返った時に貴重な著作になるかもしれない。2022/12/07

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