内容説明
時代に翻弄されながら、したたかに生きた十五人の職人の物語。
誰の心にもきっと「失われた村」がある。
パリに住む中国人作家・申賦漁(シェン・フーユイ)が描く、江南の村を舞台にした一大叙事詩。
父や祖父から聞き、幼い頃に交流もあった、故郷の村の個性的な人々。
彼らがたどった波瀾万丈の物語を、筆者は百年にわたる十五人の職人の話として描いた。
中国、フランス、アメリカで刊行され、各国で高く評価されている注目作家、待望の初邦訳作品!
◆十五人の職人とその物語
1 瓦職人:キリスト教に改宗し、先祖の位牌を焼いた男の話
2 竹細工職人:老いたアカウシと暮らし続けた男の話
3 豆腐職人:夭折した友人の父で、礼節を重んじた男の話
4 灯籠職人:外祖父が新四軍の逃亡兵だったと知る話
5 大工:祖父の大ノコギリが夜中に死者を知らせる話
6 床屋:日本軍がきた村で男が起こした驚きの事件
7 鋳掛屋:「村の六百年で最高の大人物」になり損ねた男の話
8 彫物師:朝鮮戦争から戻り孤独に死んだ男の秘められた恋
9 植木職人:幼馴染が猫殺しの事件に巻き込まれる話
10 鍛冶屋:先祖の陵墓を失った男が死して掘り返された話
11 なんでも屋:定職に就かない伯父が語った幽霊譚
12 仕立屋:名士の息子が密告を受けて死刑になる話
13 教師:文化大革命で進学も恋愛も成就しなかった男の話
14 秤職人:「三代続けて頭の弱い男が生まれる」と予言された家
15 織物職人:意に沿わぬ結婚から自らの人生を貫いた女の話
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヘラジカ
57
素晴らしい。今年の海外文学ダークホース枠は決定だ。「申の村」の歴史を細分化し、一人一人にスポットライトを当てることで、たった一つの共同体がまるで神話のように豊かで息づいて見える。ロマンスや戦争、喜怒哀楽とあらゆるドラマが満ち溢れており、とても一冊の小説とは思えない程である。中国文学のエッセンスが凝縮された傑作。人と物語が相互に繋がりあって歴史は形成されるのだなと感じ入ってしまった。短篇小説としても魅力的で、長篇として読んでも構成が非常に優れている。こんな作品が読みたかった。2022/09/09
たま
54
600年前、申村に祖先が定住し、1970年生まれの著者は17代目。最近の村は変貌著しくそれが著述の動機となったようだ。竹細工や鋳掛屋など失われゆく職人の手仕事の風景が淡々と綴られ印象深い。後半は日中戦争、国民党と共産党の対立が影を落とし、巻き込まれる村人が哀れ。最後の織物職人の女性は幼児期の婚約に縛られるむごい話。時代は20世紀、法律はないのか。放火や誘拐のような重大な犯罪でも犯人を占いで探す。そして共産党支配と50年代の飢饉。著者が18歳で村を離れたのも無理はない。社会史としてもとても興味深く読んだ。2022/11/06
さとうしん
15
中国の農村で暮らしてきた職人たちの物語。著者やその父祖が自分たちの暮らしてきた村で見聞きした話に基づくノンフィクションということだが、やはり地方の農村での伝聞に基づく小説『一日三秋』を連想させる。同じ村での話なので、鍛冶屋の章が仕立屋の章と深く関係してくるといった構成も面白い。老百姓が辛亥革命や文革といった大文字の歴史にどのように巻き込まれ、あるいは巻き込んでいったのかという読み方をすると面白い。2023/02/20
まこ
10
中国のある田舎の村。100年に渡る物語で、村の風習に近代化が入ってくる。主人公も悪ガキから都会へ出てたまにしか帰ってこないのも近代化の一つ。あくまで申の村が舞台だけど、同じような村があるんだろうな2023/08/25
本の蟲
10
中国のありふれた農村の百年史。「十五人の職人と百年の物語」というサブタイトル通り、村出身の著者が瓦職人、竹細工職人、豆腐屋、灯籠職人…と知己である職人の家の歴史を順々に物語っていく。辛亥革命。日本との戦争。国民党と共産党の対立。村の人民公社化。文化大革命。朝鮮への派兵。変わっていく村。翻弄される個々人の間でも因縁や対立、日々の生活に結婚や就職などの各種イベントがあり、なにせ百年前からの話なので民間伝承やまじない師も現役で活動している。最後まで淡々とした語りだったが、教科書には載らないリアルな中国を味わえた2022/09/27
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