内容説明
イギリスと日本を往復する著者は、コロナ禍とウクライナ情勢を受けた日本の対応に危機感を覚えた。「鎖国」「自粛」「平和ボケ」……そういったキーワードで「わかったつもり」に陥っているメディア、専門家、国民に対する危機感だ。それは、両国の境界に位置するからこそ感受しえたものである。従来の日本文化論的思考では、「空気」の読み合いとか「同調圧力」といった言葉で説明・納得し、そこで思考停止してしまう。そのことで、議論が中途半端に終わったり、対立する議論の接点をとことん求めたりしないまま、白か黒かの素朴な二項対立に終始してしまう。
まずは、私たちの「思考の習性(クセ)」を知ることから始めなければならない。著者はかつて「ゆとり教育」論争や、最近ではコロナ禍の九月入学論議において、実証的なデータ分析を駆使して一石を投じた。今回は機内濃厚接触者になった当事者としての体験と「言説データ」を携えて、ニッポンの宿年の課題を鋭く検証する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
まゆまゆ
17
コロナ禍の中で行われていた入国制限の対象となり隔離生活を過ごした自身の14日間の体験記と、「自粛を要請する」という言葉の違和感から始まる、人々が言葉を受け取る際に作り出すイメージによって揶揄的な意味を感じとる様子に注目することで、背後に潜む問題意識や認識に制約をあたえる枠組みを考察していこうと試みる内容。ややタイトル負けの感あり。2022/11/22
たろーたん
5
「平和ボケ」という言葉は、左翼の「憲法を守れ」と言う人に使われているイメージだが、この本ではタカ派にも使われる例が載っていた。例えば「安全保障の要諦は敵を減らすことだ。敵になりそうな相手はなんとか中立にすることが大切で、敢えて敵を作るのは愚の骨頂だ。タカ派の平和ボケは本当に危ない」みたいな。確かに、絶対に敵は攻めてこないとするのも平和ボケかもしれないが、敵を作らず平和を維持しようとしているのに、ガンガン仮想敵を作って支持率を上げようとしている奴がいたら、平和ボケだよね。2023/05/30
linbose
2
★★★★☆コロナ禍での「自粛の要請」という妙な言葉よる行動統制は成功体験となったが、同調圧力というようなことで思考停止するのではなく、自粛の意味合いと作用を見極め、時にそれに抗うことのできる自覚が必要。 憲法と自衛隊について、教科書は合憲、違憲説の両論を併記の上、平和主義の重要性を説く。このような構図は、現実主義と理想主義とのアンビバレンスを弛緩させ、ナイーブに白黒の立ち位置の選択を迫るところで思考停止する。高坂正堯は、アンビバレンスの生み出す緊張関係を自覚して「悩み」続けるという態度が必要だと指摘する。2023/09/05
ワシじゃ
2
筆者は鎖国の経験を引合いにしているが、言霊信仰や民族性については語ってはいない。冒頭のコロナパンデミックでの状況分析で考察が足りてない。2023/04/24
Masaki Sato
2
前半は英国からの帰国時の隔離生活のフィールドノート。これはこれで貴重な資料として読んでいて面白い。後半は、「自粛」「鎖国」「平和ボケ」をテーマに日本の議論のアンビバレントな言説を説く。「自粛」の日本社会での使われ方を戦中、昭和天皇崩御、震災あたりから紐解いていく(パオロ・マッツァリーノあたりが書いた方が面白いと思う)。2022/12/21
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