内容説明
19世紀末。アフリカ大陸の中央部に派遣された船乗りマーロウは、奥地出張所にいるという象牙貿易で業績を上げた社員、クルツの噂を聞く。鬱蒼たる大密林を横目に河を遡航するマーロウの蒸気船は、原住民の襲撃に見舞われながらも最奥に辿り着く。そこで目にしたクルツの信じがたい姿とは――。著者の実体験をもとにし、大自然の魔性と植民地主義の闇を凝視した、世界文学史に異彩を放つ傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
buchipanda3
104
アフリカ中央を流れる大河。それは大陸の秘された心臓へ繋がっているかのよう。その未知なる闇へ向かう高揚と不穏さを著者の詩的ながら現実感のある饒舌な語りで大いに味わった。船乗りのマーロウは導かれるように最奥部へ向かう。見えてくるのは支配される者たちの不条理な姿と物言わぬ大密林(wilderness)の圧倒的な姿。その対比は人間の所業の歪な不気味さを際立たせ、マーロウは大密林の尽きない魅惑に憑かれた人間の欲望の果ての恐怖を知る。遠い本国では誰も危険の本質に気付かない。それは大いなる自然に諭されているかのようだ。2024/02/29
sin
61
欧州の国々が切り取ろうとした暗黒の大陸…そこに生きる人間を蔑みながらも、その地を恐れた白人が大密林の呪縛に捉えられて教化される有り様が描かれているようだ。そして、語り手は彼らを「…敵ではない」と表現するが、経済的効率を優先させた道具としかみてはいない。「-効率への献身だ。」「サハラ砂漠の砂の一粒にも等しい蛮人の死」 作者の白人至上主義が垣間見える。 ◆英ガーディアン紙が選ぶ「死ぬまでに読むべき」必読小説1000冊を読破しよう!http://bookmeter.com/c/3348782023/09/30
KEI
36
結構読みにくい小説。主人公が饒舌で、読者に話しかけてくる。地獄の黙示録の原案とのことで、設定、登場人物の名前などに窺える。小説のほうは結局何が言いたかったのか理解できていない。だからか久しぶりに映画は見たくなった。2022/11/21
フリウリ
26
19世紀のフランス小説を続けて読んでいて、解毒的に読みました。不穏と不安ばかり描かれているのに、何か新しいこと、未知のこと、そう簡単には理解できないし、ひょっとすると永遠に理解できないこと、に開かれている印象で、素晴らしいと思います。1899年刊。102024/05/25
紫羊
25
読み応えがあった。クルツが登場して、ヘルツォークの「アギーレ、神の怒り」の主人公を思い出した。訳者によるあとがきにも触れられていた。でも結局クルツは謎のままだった。それが名作たる所以なのだろう。2025/06/07