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内容説明
平安後期から戦国時代にかけて、政治・社会の中心にいた中世武士。日常的に戦闘や殺生を繰り返していた彼らのメンタリティーは、『葉隠』『武士道』で描かれた江戸時代のサラリーマン的な武士のものとはまったく異なっていた。史料に残された名言、暴言、失言を手がかりに、知られざる中世武士の本質を読みとく画期的論考。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
120
源義家から伊達政宗まで武家成立期を生きた33人の武将や公卿の有名な発言を引いて、名誉とプライドを重んじて主君への忠義など二の次だった心性を検証する。最初は朝廷の走狗だったのが天下まで掌握し、実力主義で領地拡大を図るまでの価値観の変遷が見えてくる。一貫した論考ではないので読み応えは今ひとつだが、あの名セリフにはこんな裏があったのかとか、一般に理解されているのとは違う意味だったのに驚かされた。江戸時代のサラリーマン武士こそ異質であり、殺し殺されるのが当たり前の中世とメンタリティは全く異なっていたと教えられる。2023/04/29
六点
94
「史料に残された名言、暴言、失言を手がかりに、中世武士の本質を読みとく画期的な論考」と言うより、新聞コラムを集成したものであり、武士の名言に見る人物とその時代を通覧できる著書である。無論井沢元彦批判もきっちりあるよ。しかし初出が新聞や雑誌連載なため、所々でロマン回路が作動しているのかよかった。2024/07/05
Willie the Wildcat
74
武士の原理原則の根底を、史実と論理で考察。数多くの簡潔な事例が導く最終章。自力救済の確立から主従契約への変遷も、根底の誇りと名誉重視は原則不変。それを体現した畠山重忠と竹崎季長。華麗な前者と泥臭い後者。対照性、どちらもアリ。政宗で事例を〆たのも納得感。転機が滲む事例は、源頼朝、山名宗全、そして細川政元。人望が生き様と最期の差異という感。解釈次第ではあるが、著者が示唆する藤原定家の人間味も印象的。2023/04/25
南北
69
源義家から伊達政宗までのさまざま人物の「名言」から中世の武士がどのようなものかを探ろうとしている。最後の後書きが実質的な本論であり、それまでの部分はその具体例だと考えると後書きから先に読んでも良いと思う。自分の命は自分で守る、自分の欲しいものは力ずくでも奪うという自力救済の考え方は現代とはあまりに異なる考えのため、なかなか理解しにくいところもあるが、歴史がそのような人々の考えで形成されていったと考えれば知っておく必要もあるだろう。中世日本人の考え方の一端に触れることができる好著だと思う。2022/12/16
今ごろになって『虎に翼』を観ているおじさん・寺
64
あれこれあって現在はYouTubeまでやっている呉座勇一先生の新刊である。読めば共感して頂けると思うが、この内容は選書ではなく新書サイズで充分ではないのか?。昔から作家や学者がなんとかブックスで出していた、よくある武将名将語録の、とりあえず最新版、ぐらいの本である。付け足しの最終章で辻褄合わせのように一般向け研究本の顔をして終わる。もちろん私は歴史のアマチュアであるから、「へえ!」という刺激ぐらいはちょいちょいあった。ただ、上杉謙信の章は、謙信や武田信玄よりも井沢元彦が主人公だと思ったのであった。(完)2022/11/25