内容説明
「お前は、ただの物知りになりたいのか?」
夏木林太郎は、一介の高校生である。幼い頃に両親が離婚し、さらには母が若くして他界したため、小学校に上がる頃には祖父の家に引き取られた。以後はずっと祖父との二人暮らしだ。祖父は町の片隅で「夏木書店」という小さな古書店を営んでいる。その祖父が突然亡くなった。面識のなかった叔母に引き取られることになり本の整理をしていた林太郎は、書棚の奥で人間の言葉を話すトラネコと出会う。トラネコは、本を守るために林太郎の力を借りたいのだという。
お金の話はやめて、今日読んだ本の話をしよう--。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やすらぎ
326
本には力がある。読むだけではなく自らの足で考え歩くことで、心強い友人を得る。人には誰しも心があるように、本にも心がある。著者の気持ち、読了者の感動が合わさり、手元に今届いている。そして私を支え続けている。どんなに深い森の奥で小さな心が佇んでいたとしても、決して時は止まることなく傍らには本があった。本の話になると草木が微かにざわめき木漏れ日から微笑み。人と人が深く通じ合えなくても保てる関係。私は本も人も愛している。一つひとつの出逢いに感謝して、大切なことが積み重なる自身を見つめ直して、今日も一冊の本を開く。2023/03/24
しんごろ
319
奥が深い話でした。それこそ迷宮に入るような…。自分にとって本とは何だろうか。この物語を読んで、考えてみたいと思うけど、考えれば考えるほど、深みにはまって、自分が迷宮に入るかも…。答えが見つからなくても、本が好きなのは変わらない。人それぞれの読み方、楽しみ方がある。本が好きという想いを大切にして、これからも読み続けたい。うん、「俺は本が好き」。このシンプルな気持ちだけがあればOKだよね。本について考えるいいきっかけになる物語。トラよ、いつまでも本を守っておくれ。2022/10/18
mae.dat
303
4つの迷宮4章立て連作+序章,終章。それと「解説にかえて」とある著者解説。これって結構大事かも。単行本版には載っているのかな。謝辞の部分は別としても。本書は、夏川さんなりに考える、読書とはどの様な体験であるかを著している様であり。読者である我々は読書にどう向き合っているのかを問われている様でもありました。最終話は古書中の古書の権化と対峙して。自身の影響力は低下して存在価値を自ら疑っている様なんですよね。なんて答えを出すのだろうと思いつつ、自分ならこう言うとか考えちゃいますよね。2025/07/02
Karl Heintz Schneider
167
高校生の夏木林太郎は祖父と二人で暮らしている。幼いころに両親は離婚、すぐに母親も他界し小学校に上がる前に祖父の営む古書店に引き取られた。その祖父もある日突然心筋梗塞でポックリ逝ってしまう。店をたたもうとしていた林太郎の前に1匹の猫が現れ「閉じ込められている本を助け出さねばならない。わしに手を貸せ。」かくして青年と猫の不思議な旅が始まる。彼らの前に立ちふさがるのはいずれ劣らぬ偏屈者ばかり。果たして林太郎たちは本を助け出すことができるのか。夏川草介さんは初読み。若干硬いけれど読みやすい文章という印象を受けた。2022/10/20
へくとぱすかる
154
本、そして読書について、長い間モヤモヤと思っていたことが見事にテーマに取り上げられ、しかもそれを物語の形で見せて(読ませて)くれた! 目標を決めて読書をがんばるのが悪いとは思わないが、数字にこだわり過ぎるのは、確かに何か不自然だとは思っていた。そして鏡を覗くような気分で、最後まで「なるほど」の連続だった。何のために本があり、人は本を読むのか。殺伐とした時代こそ、せめて優しさを読書から知ってほしいものだと、繰り返し思う。新春から爽やかな物語をもたらしてくれた林太郎くん、沙夜さん、そしてネコのトラに大感謝!2023/01/02
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