内容説明
琉球王国として独自の文化を形成した沖縄。1938年に初めて現地を訪れた柳宗悦は、工芸品ばかりでなく、建物や人、暮らしぶりにいたるまで、すべてが美しい島々に魅了される。以来、来島を重ね、調査・蒐集を行い、展覧会などを通じてその魅力を紹介した。しかしその夢のような美の王国は1945年の沖縄戦で灰燼に帰してしまう。本書には表題の「琉球の富」をはじめ、柳が沖縄のすばらしさや沖縄の人々への想いを綴った主な論考を収録。あわせて玉陵や識名宮、首里の町並みなど、失われてしまった美しい風景を記録した貴重な写真も多数掲載。戦前の沖縄がここに蘇る。文庫オリジナル。
目次
琉球の富/琉球の風物/琉球学の第一歩/現在の壺屋とその仕事/壺屋の新作/芭蕉布物語/沖縄の民藝/沖縄の文化財保護に/国語問題に関し沖縄県学務部に答うるの書/沖縄の話/沖縄の同胞に/沖縄の思い出/首里と那覇/解題/解説 柳宗悦が沖縄で観たもの(松井健)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
68
柳宗悦の沖縄に関する文章をまとめた一冊。民芸運動の創始者らしく、各文章の中心となっているのは壺や芭蕉布といった沖縄の持つ独特の民具となっている。写真も多数収録されており、戦争で烏有に帰した建物に首里の街並みや人々の様子も窺う事が出来る。今となると愚かとしか言いようのない標準語励行運動への批判も収録されており、戦時下の文章も士気高揚というより文物の紹介が中心だし、一読して思うのはやはり沖縄の人々や文物に対する愛というか思い入れだと思う。読んでいると一度だけ行った、あの沖縄の青い空と海を思い出すなあ。2022/07/11
かおりんご
24
古き良き琉球の姿が描かれている。柳の目から見た琉球は、大変美しい。戦争で全てを焼かれ、戦後はアメリカの統治下で、琉球らしさを発揮できなかったのが非常に残念でならない。こうして、文化や伝承は途絶えていくのだろうか。あー、沖縄に行きたい!2022/12/14
あきあかね
18
「沖縄は小さくとも、その仕事は決して小さいものではない。沖縄はその音楽や舞踏や文学と共に、工芸でも永遠にその名誉を保つであろう。」 本書が書かれた頃も、現在も、経済や所得の面では沖縄は豊かではないかもしれないが、文化の面では、「琉球の富」は比類ない豊かさを有している。「民藝」を提唱した柳宗悦は戦前、4度にわたり沖縄を訪れ、染物や織物、焼物といった工藝だけでなく、赤瓦の家並みの美しさ、日本の古語が保存された琉語、日々の生活の中を満たす音楽など、戦争がすべてを焼き尽くす前の光芒を捉えている。⇒2024/11/26
紅咲文庫
13
冒頭の章で繰り返し語られる首里の美しさ。朱色の本瓦葺きが連なる街並み、丘の上に立つ首里城の美しさはそのまま王朝への敬いとして語られる。日本列島から台湾の間に連なる諸島は、距離的に台湾に近くとも、その文化は明確に日本とつながるものだという。千年続いた王朝の貴重さを説き、墓地に現れる先祖への思い、生活に根付いた歌と踊りについて語る。美しいものを讃える純粋な口調に引き込まれていく。首里の街並も美術館や博物館で守られてきた品々も沖縄戦で焼き払われた。残された写真はモノクロだが、どんなに美しかったのかと想像する。2022/10/20
ミー子
3
琉球(沖縄)の美しい工芸・建築や音楽や暮らしについて、柳宗悦が書いたこんな本があるなんて知らなかった。戦前に4回も、沖縄に長期滞在していたなんて。つくづく、戦争でことごとく破壊されてしまったのが残念で痛ましい。もし戦争がなければ、多くの国宝級の建築や工芸があったかもしれないのに。この本は文庫本だから、多くの写真が省略されてるのは残念。大判で全ての写真を見てみたい。破壊される前の、貴重な、琉球の美の記録。2025/03/22
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