内容説明
死刑廃止の国際的な趨勢に反し,死刑を存置し続ける日本.支持する声も根強い.しかし,私たちは本当に被害者の複雑な悲しみに向き合っているだろうか.また,加害者への憎悪ばかりが煽られる社会は何かを失っていないだろうか.「生」と「死」をめぐり真摯に創作を続けてきた小説家が自身の体験を交え根源から問う.
目次
死刑は必要だという心情
「なぜ人を殺してはいけないのか」の問いに向き合って
多面的で複雑な被害者の心に寄り添うとは 「ゆるし」と「憎しみ」と
なぜ死刑が支持され続けるのか
「憎しみ」の共同体から「優しさ」の共同体へ 死刑の廃止に向けて
注
あとがき
付録 死刑に関する世界的な趨勢と日本
(1)死刑廃止国と存置国
(2)二〇二〇年に死刑を執行した国と件数
(3)日本の死刑執行者数と確定者総数の推移
(4)死刑をめぐる日本の世論
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
302
平野 啓一郎は、新作中心に読んでいる作家です。死刑制度「残置派」から「廃止派」に転向した著者の死刑論、著者の主張は理解出来ますが、性善説にたった理想論ではないでしょうか❓ 私は今も昔も「残置派」で、一部に関しては、更なる厳罰化を望みます。少子高齢化の社会において、未来のある子供を卑劣な理由で殺害した場合は、一人であっても死刑にすべきです。ex.小児性愛者が、幼女を強姦後殺害したケース このケースは良くて無期刑です。 https://www.iwanami.co.jp/book/b606544.html2022/08/11
trazom
167
改めて、この作家への尊敬の念が深くなった。20代後半まで死刑存置論者だった平野さんが死刑廃止派に考えを改めるに至った根拠が、極めて論理的に説明される。反対意見の人を批判や論駁するのではなく、自分の中で考えを熟成させて、冷静に理性的に語る姿勢が素晴らしい。憎悪や応報感情や自己責任論を基にして社会の仕組みを作るのではなく、加害者の生育環境への慮りと被害者へのケアを大切にすべきだと言う。「僕は国家に優しくなってもらいたいと思っています」…国家の冷たさばかりが身に沁みる時代に、平野さんの良心が心に響く。いい本だ。2022/12/25
ちゃちゃ
120
平野氏の作家としての誠実さ、真摯な姿勢に心打たれた。死刑制度の存廃に関して、彼は20代後半までは死刑もやむなしと考える「存置派」の立場だったという。それがなぜ「廃止派」へと変わったのか。その変化の経緯や根拠を、非常に明晰かつ冷静、率直に述べている。世界的には死刑制度の廃止国が圧倒的多数を占める中、日本ではなぜ存置され続けるのか。日本の文化的宗教的背景や人権教育の失敗も踏まえ、「憎しみ」ではなく「優しさ」で被害者に寄り添う社会を目指すべきだという彼の立場に、共感の念を強くした。静かな問題提起の、良書だ。2023/01/10
zero1
92
本書が存在する意味は?平野は綺麗事を書いてるだけ。死刑を支持している私から見て目新しい内容は少ない。遺族のケアは必要だし取材は出来ている。だがツッコミどころ満載。殺人は例外無き【絶対的な禁止】?凶悪犯でも射殺はダメ?(後述)。死刑廃止で囚人は反省する?犯罪が【社会の怠慢】なら死刑だけでなく無期懲役など長期の刑罰も廃止しなくてはならないはず。【死刑廃止後】について平野は避けている?終身刑は残虐な刑罰ではない?現実は平野が述べる【優しさ】なんかで解決しない。再読に値しない【トンデモ本】。実に下らない。2023/02/24
レモングラス
88
読み友さんおすすめの一冊。平野啓一郎さんの文章は読んでいてわかりやすく疲れない。死刑についてというテーマでありながら、疲労感なく読むことができる平野啓一郎さんの静かな文章。被害者の複雑な悲しみに本当に向き合っているだろうかの問いかけに、死刑が求刑されるような犯罪をどうすればもっと減らすことができるのか、真剣に考えることが必要なのではと感じました。静謐を願う気持ちで読みました。2025/08/31




