内容説明
「これから、わたしたちはどうなるの?」二人の愛する女から突きつけられた言葉に、ケマルは答えようがなかった。彼の心はスィベルとフュスンの間を揺れ動き、終わりのない苦悩に沈む。焦れた女たちはそれぞれの決断を下すのだが──。ケマルは心配する家族や友人たちから距離を置き、次第に孤立を深める。会社の経営にも身が入らず徐々にその人生は破綻していく。トルコ初のノーベル文学賞作家が描く、狂気の愛の物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
hiroizm
40
他の男と結婚してしまった遠縁女性への愛を捨てきれず苦悶する主人公は、さまざまなな理由をつけて親と同居の彼女の家に日参し、遂には彼女が触れた物を盗み収集する行為、異様なフェティシズムへと堕ちてゆく。彼女の一家が暮らすどこか郷愁感じる1980年代イスタンブール下町の様相や、クーデターなど当時トルコ社会情勢を交えながら、優雅さと憂いをまといつつも狂愛くすぶる心情描写の展開は再読でも引き込まれた。初読時も今回の再読時もやはり小説最後の一行がとにかく深い。超お勧め本。2023/03/17
Shun
39
フュスンへの深い愛情ゆえに、ケマルは生涯をかけ彼女との縁の品を集め博物館にすることを思いつく。ケマルとフュスンの馴れ初めから互いに仲を深めていく過程で、度々ケマルのその危うく偏執的な収集癖が挿し込まれています。そして物語の後半にてようやくその行為は博物館という形へと結実し、彼の魂とも言える愛する女性との思い出はスキャンダルと凋落にまみれながらも、その内実は誇りを持って披瀝できる程にケマルの全てであった。愛した人の博物館を構成する品々と共に、男と女そしてトルコの混沌の時代を辿る大河小説のような壮大さでした。2022/08/27
A.T
27
タクスィム広場、チュクルジュマ、アタテュルク橋…市内の地域名が季節や時刻の光と影をまとい、アザーンが響きコウノトリが群で訪れる空が、ボスフォラス海峡に遠く響く汽笛が…イスタンブルを丸ごと生きた空間に感じることができた。男女が自由に生きられる欧州の人々に憧れる若者たちの中で、主人公はその世界を拒否する。オスマン帝国から続く郷愁の世界、富める者が貧しい者を囲い、その中にとどめようとする。籠の中の鳥が暗示する。しかし、女性は新しい世界で生きたかったのだ… まるで川端康成「雪国」で燃え尽きた葉子のような。。。 2024/06/15
しゅん
19
全ての恋愛関係が社会的であり、貧富の差、性別の差で期待されている。フュスンの立場からすると、逃げ道のない地獄として見えていてもおかしくない。かつて体を許した、金持ちで執着的なサイコパスの親戚にまとわりつかれ、親も男に同情的という状態を考えれば。社会状況のフェミニズム的描写という側面は確実にある。と同時に、ケマルはスーパー金持ちであるが故に挫折の機会を失った男であり、「金持ちの反省できなさ」という問題も浮かぶ。博物館ってなんなんだろ…という問いが浮かんだままである。あと、後半はどんどん面白く読みました。2023/10/09
nchtakayama
9
今月のはじめトルコに行った。若い世代の身に染みている西欧の価値観と、親や祖父母の世代の受け継いできた価値観が共存し、前者が後者を覆いつつあると感じたのは、この本を携えて歩いたからだろうか。英語で話しかけると険しい表情で「英語は分からない」と吐き捨てられたトルコ語に、反省して共感した。世界の中心と辺境の問題だろう。そのような問題を一人の人間への愛情という究極的に個人的で精神的な動きと繋げるという、小説のいちばん凄い力で深い感動を味わった。それも大量の情報とともに。「博物館」というものの最深部をみた気がした。2025/12/27
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